Aludra☆S☆

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「加藤くん、大丈夫？全然食べてなかったみたいだけど」

「そんなことないですよ」


「そう？ならいいけど。
それより、行くでしょ？もう一軒」


「いや、明日早いし、まだちゃんとセリフ覚えてないんで…」



主演の俺が行かないのはマズいだろうかとも思ったけど、ちゃんとした打ち上げはクランクアップ後にやるんだし、別にいいよな。

そもそもこの人は別に俺と飲みたくてもう一軒行くわけでないだろうし。


誘いを断ると、名バイプレイヤーのこの俳優は、他の共演者やスタッフを連れて、古びた外観のスナックに入っていった。





東京から車で3時間ほどの山あいの町。

ここで2日前からドラマのロケをしていた。


明日がこの町でのロケ最終日ということで、今日は撮影後にとある食堂を貸し切って出演者とスタッフで会食をした。


山間部の町ならではの山菜や川魚料理はちゃんと美味しく頂いたけど、調子悪そうに見えただろうか。


だとしたら、それは…






宿泊先の旅館に戻るとすぐに部屋に籠もり、広縁の椅子に座って台本を開いた。

温泉旅館に必ずと言っていいほど存在する窓際のこのスペースは、小さなテーブルと椅子が二脚あるだけだけど、メインの和室より好きかもしれない。




だいぶ長いこと本読みに集中してた。


軽くストレッチしながら、窓の外に目をやる…

真っ暗で何も見えねぇし。


…って、こっちはすげぇな。


空を見上げると、周りに余計な明かりが何も無い分、東京じゃ絶対観れない星空が広がっていた。



思わず部屋の電気まで消して、アプリを起動する。

あの日、俺も星の観察してみるわって、Aの目の前でインストールしていた。

その後一度も起動していなかったんだけど。



「アルドラ…」

俺でも見つけられるくらい、その星はちゃんと存在していた。


A。

俺の星、ちゃんとキラキラしてたわ。



東京ではここまで見えないけど、Aも今同じ様にスマホ翳して空見てたりしないかな。



やっぱり会いたいわ。


東京から離れても、ドラマに集中しようとしても、俺の頭の中は結局Aに独占されちゃうじゃん。

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