7 ページ31
.
「……ねえ」
「ダメだよ」
まだ声をかけただけなのにこうもバッサリ切られてしまうと何も言えない。目の前に座って読書を続けるはっちに私は思わず半目になってしまう。とは言っても、するべきことは手元の書類整理しかすることがない。この社畜さたるや、どこぞの蘭たんには見習って欲しいところではある。
手元の作業を進めつつ、何故か私の書斎に居座って読書をするはっちをチラと覗き見ると、黙々と読書を続けている。この場から移動する気は無いらしい。多分さっきの私の行動を不審に思って監視を続けているんだろうが、生憎と私はこれからしゅーさんの書類見直しを私にいかねばならない。
残念だったな、と何かに対しての自慢をかまして私は席を立つ。
「はっち、ちょっとしゅーさんに書類渡してくるから」
「あ？ なんで俺に言うの？」
「はーぁ？ ちょ、アンタねぇ〜〜！！」
ツンとした態度で「俺ここで読書してただけなんだけど？」とでも言いたげにこっちを見るはっちに私は思わず絶叫した。コイツ…！ コイツ……！！ 地味にムカつくことしてきやがってよ…！！
もう絶対話しかけない、と心に決めて勢いのままにドアノブを掴もうと手を伸ばした瞬間、目の前のドアが開き、ごちんとかなりの勢いで私の額へぶち当たった。
「ぎゃん！！」
「ぶッ、」
「エッAさん！？ うわ、すみませ〜ん…」
悲鳴が犬みてぇ、と呟きながら含み笑いを浮かべるはっちを目敏く睨んだ私は、今度は全く気持ちのこもってない謝罪をするしゅーさんを睨む。はは、と乾いた笑いをこぼしてにこやかに笑うしゅーさんのその顔を一発殴らせてほしい。
しかし、ムカつくあまりに振り上げた拳はしゅーさんの一言で行き場を失った。
「あ、もしかして俺に用事でした？ だったら申し訳ないんですけど、今からちょっと急ぎの用があって無理です」
「え、急ぎの用？」
「はい、急ぎの用です。はっちさん、今出られます？」
「俺？ 一応出れるよ」
しゅーさんによって簡単になだめられてしまった私は、ぽかんとしてその場に立ち尽くす。振り上げた拳、手にはしゅーさんに渡す予定だったら修正要請書類。側から見れば可笑しな格好だ。私は一体、この振り上げた拳をどこに下ろせば良いのだろう。
読みかけの本に栞を挟んで立ち上がったはっちはしゅーさんと共に部屋の外へと出て行った。なんか悔しい。私はすぐに書類たちを置いて、こっそりと二人の後に続いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あんどろめだ。(プロフ) - レオさん» わ、返信遅れてすみません…！ 最近多忙で遅くなり気味な中読み返していただいてること、感謝しかないです。頑張って完結まで持って行く予定なのでどうぞよろしくお願いします。 (2022年3月13日 23時) (
レス) @page42 id: c0a7f479fc (このIDを非表示/違反報告)
レオ(プロフ) - 再度コメント失礼します…！この作品が大好きでいつも見返しちゃいます…！更新が来た時はよっしゃ！って喜んでますw 絵も大好きです！更新頑張ってください (2022年3月8日 21時) (レス) @page41 id: 3d8ad3b262 (このIDを非表示/違反報告)
あんどろめだ。(プロフ) - たたたさん» コメントありがとうございます！ 勿体無いお言葉を…嬉しいです、ありがとうございます…！ 更新頑張ります！ (2021年10月16日 21時) (レス) id: c0a7f479fc (このIDを非表示/違反報告)
たたた - (個人的に絵がとても素晴らしいと思います) (2021年10月16日 1時) (レス) id: c975c1c0b4 (このIDを非表示/違反報告)
たたた - コメ失礼します！！もうずうっと読んでます...文才！！ナもdも書き分けも文章もガチ好きです...頑張って下さい！陰ながら応援させて頂きます！ (2021年10月16日 1時) (レス) id: c975c1c0b4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あんどろめだ。 | 作成日時：2021年6月23日 18時
