生前 伍 ページ5
弱々しい微笑みを向けると、鱗滝は驚いたのか手を握る力が弱まった。
『う、鱗、滝、さ。ど、どう、か、あ、あの子、に、つた、えて、くだ、さいま、せん、か?』
鱗滝「だ、駄目だ!お主が自分の言葉で!声で伝えるんだ!」
鱗滝の悲痛の叫びさえ、もう聞き取れ難くなってしまう。
『
________ 』
そう途切れだった言葉を綺麗に告げると、鱗滝の握っていた手は力なく地面に落ちる。
鱗滝「おい、おい!目を覚ましない!お主はまだ死んでいい者ではない!聞きなさい!目を開けなさい!【鈴璃】!」
そう叫ぶが、もう二度と、その"父親譲りの金色の瞳"が開くことはなかった。
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翌日。
血を綺麗に拭かれ、白の着物に着替えさせられた状態で煉獄家に帰ってきた。
瑠火「嘘!嘘よ!そんな!嘘よ!」
慎寿朗「起きんか!もう朝だぞ!目を開けなさい!」
杏寿朗「姉上!姉上!目を開けて下さい!また剣の指導をつけて下さい!姉上!」
悲痛な三人の泣き声が、家の外まで響いてくる。
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葬式は鬼殺隊全体で行われ、何度か助けてもらった者や、仲が良かった者、慕っていた者達が泣き崩れ、グダグタであった。
産屋敷「すまない。まだ幼い娘を、死なせてしまった」
慎寿朗「いえ。お気遣いなく。大丈夫ですのでどうか、お引き取り下さい」
鬼殺隊当主・"産屋敷耀哉"の訪問でさえ、今の慎寿朗は、耐え難いものであった。
鱗滝「君が、杏寿朗くんかね?」
杏寿朗「うぐ、はい」
未だに泣いていた杏寿朗に、鱗滝が話しかける。
鱗滝「実は、君の姉上から言伝を頼まれていたな。聞いてくれるかい?」
杏寿朗「!はい!」
涙をゴシゴシと拭って、杏寿朗は鱗滝の言葉を待った。
鱗滝「《ごめんなさいね。杏寿朗。弱い姉上で。だけど、
________私はあなたを"ずっと愛しています"』
その言葉を聞いた瞬間、杏寿朗は一気に涙を流し出す。
杏寿朗「うわあああああああああああああああああああ!姉上えええええええええ!杏寿朗も!姉上を!お慕いしておりますううううう!」
叫びながら泣く杏寿朗を、鱗滝は強く抱き寄せた。
鱗滝「すまない!すまない!お前の姉上を助けてやれなくて、すまない!」
腕の中で泣き叫ぶ杏寿朗を、鱗滝はずっと抱きしめ続ける。
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KIRAN1225aavk(プロフ) - ありがとうございます!時折更新出来ない時もございますが、ご了承下さい。 (2019年5月28日 21時) (レス) id: 892392ea40 (このIDを非表示/違反報告)
鮭本 - コメント失礼します。とても面白いです!無理せず更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年5月26日 23時) (レス) id: 7e04cbc111 (このIDを非表示/違反報告)
布袋尊(プロフ) - 更新頑張ってぇー、楽しみだからァ(ぶりっ子じゃないよ!?) (2019年5月26日 22時) (レス) id: 4e763fa650 (このIDを非表示/違反報告)
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