【2】 ページ10
【語り/Hokuto】
『はい、吸ってー。少し止めて。』
聴診器を俺の胸に当てて心音を聞いてる櫻井先生。
小さいころからずっとお世話になってる先生は、
近所の親戚のおじさんみたいな感じで。
おじさんって言っても30代くらいだけど。
月1回、何も無くても検診に行ってる。
学校帰りにカフェでも寄るみたいに。
中学の後半くらいからはひとりで。
「ちょっと雑音あるね。
この間も早退したみたいだけど、どう？」
「どうって？別に…普通。」
俺の答えに苦笑いしてる先生。
「そっか。今回のところは様子見るけど、
頻繁に苦しくなったり、熱が出るようだったりしたら、
一回詳しく検査してみようか…今の心臓の状態」
「…うん…わかった」
みんな心臓には血流を調節する弁があるんだけど、
俺は生まれつきこの弁に異常があってうまく閉まらない。
小さい頃に弁を形成し直す手術を何度か受けた。
その弁を人工弁に変える手術もあるんだけど
心臓に異常があっても、若いうちは心臓自体の活動が激しいから、
出来るだけ時期を遅らせる必要があって。
だからずっと薬を飲んだり、内科的な治療を続けて。
おまけに厳しい運動制限と食事制限付きの。
今日先生が言った“検査”ってのはきっと、
その結果が悪かったら、多分人工弁に変える手術するってこと。
「まあ、まだ様子見ってところだから。
このまま北斗の心臓が元気だったら手術はしなくてもいい場合もあるし。」
でも、もし手術が必要であれば
また入院して学校には通えなくなるし。
それに人工弁に変える手術はリスクが高くて、
今後は再手術ってのが危険になってくる。
もしうまくいかなかったら…
「今度さ…進路のことで三者面談あるんだ」
「へえ、北斗はどうするの？」
そこなんだよね。
高校受験なんて兄ちゃんたちも通って、
ジェシーも行くならって今の高校に決めたけど。
大学って、将来の仕事に就くための知識をつける場所でしょ？
俺の将来って…
黙ってしまった俺を見て櫻井先生は言った。
「病気だからって大学受験諦めることないよ。
心臓病でも普通に進学は出来るからね。」
先生、違うんだ。
俺、今まで将来のことなんて考えたことが無かった。
だっていつでも俺の目の前には“死”がぶら下がってて
その日以外の遠い未来のことなんて考えたこと…無いから。
いつ、この不良品の心臓がパッタリ止まるかわかんない。
そんなやつが、将来の夢なんて語っちゃダメなんじゃないかな。
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KIKO(プロフ) - nkrysuさん» はじめまして。少し前に完結したものにこうしてコメントが来るのが嬉しいです🥺❤️続編も楽しんでいただけると嬉しいです❤️ (2021年10月28日 19時) (
レス) id: 16d48c36dd (このIDを非表示/違反報告)
nkrysu(プロフ) - はじめまして。うるうる涙を流しながら読んでしまいました（ ; ; ）（笑）続編も読ませていただきます！ (2021年10月28日 9時) (レス) @page42 id: 42b1441c9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：KIKO
| 作成日時：2020年10月16日 10時
