【3】 ページ11
.
.
「えーっと…高地の志望は…」
三者面談当日。
北斗の進路調査票を見て、担任は困り顔。
優吾も一緒にその用紙をのぞき込んで、
“将来の希望職種(夢)”の欄にデカデカと書かれた文字にギョッとする。
“兄ちゃん達よりちょっとだけ長生きする”
志望の大学も空欄だった。
「なんだよ…これ」
思わず出た言葉に、北斗は『何か問題でも？』みたいな顔をしていて。
優吾はそれより先の言葉が見つからない。
北斗が書いた文字は、普通だったら当たり前のことで。
突発的な事故でもない限り、死ぬ順番は年齢順なわけで。
でも、優吾には分かってしまう。
北斗が書いた文字の重さが。
「高地、おまえやりたいこととか無いのか？
病気のことで大学進学とか出来ないって訳じゃないんだろ？」
「だってさ、俺は…
明日死ぬかもしれない確率が他の人の何倍も高いんだよ。
お金かけて大学行って、早死にしたら意味ないし…
それなら俺が出来る範囲で働いて家族の助けになったほうがいいかなって」
優吾は、自分より9歳も年の離れた弟の言葉に息が詰まる感覚を覚える。
ショックだった。
…そして込み上げる…怒りに似た何か…
「…そうか…働くって、例えば？」
戸惑いながらも話を進めようとする担任。
「すみません…申し訳ないんですが、
今日は…帰らせてください。北斗…行こう。」
「あ、分かりました…では後日連絡しますので…」
有無を言わさず立ち上がった優吾にあっけに取られた担任の声を背中で聞いた。
そして北斗は、優吾の低い声色に少し驚いた表情を見せたが、
黙って後をついてきた気配があった。
北斗…なんで…お前はそんなに…
＿＿＿＿＿＿＿
「…ゆーご？」
「………」
帰りの車内で運転する優吾の顔色を窺うように控えめに呼ぶ北斗。
その声に、優吾は反応することは無かった。
運転する優吾は、北斗の声が聞こえないはずは無いし、
いつもだったら、その日の出来事をうるさいくらいに聞いてくる。
「…ごめんね」
無言を貫く優吾に対して、北斗は小さく呟いた。
再び訪れた沈黙のあと北斗が聞いたのは…
「なにが？」
「えっ…」
「それは…何に対する、ごめんなの？」
優しくて、心配性な大好きな兄の、
怒りと切なさで震えた、ひどく悲しそうな…そんな声だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 902人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
KIKO(プロフ) - nkrysuさん» はじめまして。少し前に完結したものにこうしてコメントが来るのが嬉しいです🥺❤️続編も楽しんでいただけると嬉しいです❤️ (2021年10月28日 19時) (
レス) id: 16d48c36dd (このIDを非表示/違反報告)
nkrysu(プロフ) - はじめまして。うるうる涙を流しながら読んでしまいました（ ; ; ）（笑）続編も読ませていただきます！ (2021年10月28日 9時) (レス) @page42 id: 42b1441c9f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：KIKO
| 作成日時：2020年10月16日 10時
