No.155 蕾 ページ23
「……私、もう誰も味方がいなくなっちゃった。
ずっと信じていた親友も、もう私から離れていって……」
「……」
「こんな世界、これから生きていける自信がなかった。
……怖いの。関わった人が、また私から離れていくのだと思うと。
考え出したらキリなくて、もう考えるのも嫌になって――死のうとした」
「……」
「……でも」
俯かせていた顔を上げ、夜空を仰いだ。
綺麗な月が、私の目に映る。
「でも――何だろ。変なんだ。
キッドに出会ってから、何か心が少し軽くなって……
自分でもよくわかんない。……でも、これだけは言える」
月に向けていた視線を、キッドに合わせた。
「――私は、死なない。
これからも生き続ける。
……こんな私でも、ちゃんと見てくれる人がいるって、わかったから」
その言葉を聞くと、キッドはなぜか驚いたような顔をした。
だが、やがてフッと笑うと、私の頭を優しく撫でる。
気恥ずかしかったが、抵抗はしなかった。
「……ねえ、キッド」
「何でしょう」
「私……もう一度、やり直せるかな」
ポツリとつぶやいた声が、部屋に響き渡る。
少しの沈黙の後、ポン、という効果音が私の耳に届いた。
「ぇ……」
差し出されたキッドの手に握られているものは、赤いバラの蕾。
「もちろんです。今はこんな蕾だとしても……」
左手で覆い被された蕾が、その瞬間、美しい花へと変わっていた。
目の前で行われる行為に、私は釘づけになっていく。
「きっと、このバラのように……強く、美しく――なりますよ」
私の手を取り、そしてそのバラを私の手に握らせた。
私はそれを胸に押し当て、口を開こうとした――が。
「……!!」
「……時間のようですね」
カツ、カツと鳴り響く足音に私は肩を震わせた。
キッドはさっと私に背を向け、窓に足を掛けようとしている。
「……ぁ……きっ――」
「――ではA嬢! またいつか、月下の淡い光の下で……お会いしましょう」
そう言って、窓から飛び降りたキッド。
慌てて窓に駆け寄り見下ろすと、真っ白なハンググライダーが見えた。
それに向けて、私は思いっきり息を吸うと――
「――っありがとうっ! キッド!!」
心からのお礼を、言い放った。
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←No.154 背中
293人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!超絶愛してますキッド様!そしてもし続編があるのなら、楽しみにして待っています!(*´ω`*) (2022年2月11日 15時) (レス) id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
M - 更新待ってます!!!頑張ってください。大好きです (2020年10月20日 23時) (レス) id: 6ba727d14b (このIDを非表示/違反報告)
向日葵 - んああああ続き楽しみすぎる! (2020年5月18日 17時) (レス) id: 66b31af3bc (このIDを非表示/違反報告)
☆FUU☆RYM(プロフ) - ラルカさん 続きが出るの楽しみに待ってます♪ (2019年8月1日 19時) (レス) id: 196066947a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続き気になります(*⌒▽⌒*)更新楽しみにしてます(*⌒▽⌒*) (2018年3月1日 14時) (レス) id: b478a7ecf3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ラルカ | 作成日時:2014年8月17日 13時