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No.151 ゲーム ページ19

「……どうして、キッドが……
 って、盗み(仕事)以外にないか。
 でも、うちに貴方が盗むような宝石なんてあるの?」

なぜか、あの怪盗キッドを前にして、
私は冷静に対処していた。

そんな様子の私に、キッドは軽く目を張ったが、
やがて面白そうに口角を上げる。

「そうですね。なら帰りましょうか……」

「……」

「……なんて。
 今日は下見の予定でしたが、変更します」

「は……?」

「今からは、お嬢さんと話をしましょうか」

気が付くと、片目をつぶり口元に指を当てるキッドが
目の前に立っていた。

「何を、言って――」

「随分と辛そうな顔をしていますよ。
 この泥棒でよければ、ぜひ話をしていただきたいのですが……」

「っふざけないでよ!
 どうせ私の事なんて、財閥の娘としか見てないくせに!
 貴方なんかに、私の事わかる訳ないッ!!」

キッドから顔を背ける。
すると、ふわっと両手で頬を包まれた。
目の前に、優しい瞳をしたキッドの顔がある。

「それでも、私はわかりたいと思いますよ。
 それとも、泥棒の言う事は信じられませんか?」

「……信じられない。
 どうせみんな、裏切るんでしょ!?

 もう……裏切られるのは、嫌なのよ……」

ジワリとまた視界が滲む。
ゴシゴシと目をこすろうとした私の手を、
キッドの手がやんわりと押さえた。

「ならこうしましょう。
 お嬢さん、私とゲームをしませんか?」

「ゲーム?」

「5分だけ、私に時間をください。
 私の事を、少しでも信用できるようにします」

「……できなかったら?」

ギュッと両手をキッドに握りしめられ、
少し顔に熱が帯びる。

それを隠すため、挑発するように私はキッドを見上げた。
彼は私の手を離し、両腕を広げる。

「その時は、私は金輪際貴女に構いません。
 そこから飛び降りるなり、好きにしてください」

「!」

キッドがニヤリと笑う。

……全部、お見通しか。

私はゆっくりと息を吸い込み、
開けっ放しだった窓を後ろ手に閉めながら、小さく言った。

「……5分だけだから」

「えぇ……泥棒は嘘をつきません。

 ……まあ、そんな事させませんけど」

低くて、真剣な彼の声を聴いた、その瞬間。
私は胸がザワつくのを感じた。


――この時から本能は察していたのかもしれない。

私はこの怪盗から……もう逃れられないと。

No.152 手のひら→←番外編のあとがき的な



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設定タグ:名探偵コナン , 怪盗キッド , ヴァンパイア   
作品ジャンル:恋愛
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橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!超絶愛してますキッド様!そしてもし続編があるのなら、楽しみにして待っています!(*´ω`*) (2022年2月11日 15時) (レス) id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
M - 更新待ってます!!!頑張ってください。大好きです (2020年10月20日 23時) (レス) id: 6ba727d14b (このIDを非表示/違反報告)
向日葵 - んああああ続き楽しみすぎる! (2020年5月18日 17時) (レス) id: 66b31af3bc (このIDを非表示/違反報告)
☆FUU☆RYM(プロフ) - ラルカさん 続きが出るの楽しみに待ってます♪ (2019年8月1日 19時) (レス) id: 196066947a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続き気になります(*⌒▽⌒*)更新楽しみにしてます(*⌒▽⌒*) (2018年3月1日 14時) (レス) id: b478a7ecf3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ラルカ | 作成日時:2014年8月17日 13時

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