【王室教師ハイネ】二人の王室教師 1 (ページ46)

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第42話意外な行動力ページ46

しかし、思っていたよりも王子達の初めてが多かったのは少し驚いた。
授業を抜きにしても、街へ連れてきたかいはあったようだ。

……そろそろ夕暮れか。
この授業も終わりだな……
初授業だったけど、何事もなく終わりそう「ど……泥棒ー！」……もなかった。

「おばあちゃんっおばあちゃんっ！」

「大丈夫ですか！」

「ああ、もうあんなに遠くに……！」

本当だ、足が速い…………ん、あれは……

「兄さん」

「ええ、こちらはお任せください」

兄さんとの二言の会話の後、私は犯人と追いかけている人を更に追いかける。
追い付いた時には、もう犯人は捕まっていた。
――――捕まえたのは、カイ王子だった。

「足が速いのですね、カイ王子。お手柄ですよ」

「……犯人……どうしたらいい……？」

「とりあえず皆さんのところに戻りましょう。
きっと兄さんが警察を呼んでくださっているはずですから、そこでこの人の身柄を引き渡します」

「ん、わかった……先生、これ持って……」

カイ王子は鞄を私に渡すと、伸びている犯人を担いで歩いていく。……意識のない人間って結構重いんだけど、カイ王子は以外と力持ちなんだな。
さっきの行動力といい、カイ王子のことを少し知ることができた気がする。

戻ったら、レオンハルト王子がこちらに向かって走ろうとしていた。

「レオンハルト王子、ストップです。鞄はこちらにありますから」

……その時のレオンハルト王子の固まる表情と、カイ王子が取り戻したと知った時に顔が赤くなって塞ぐ様子はちょっとかわいそうだなと思った。でも終わったことは仕方ないからね。

「だからからかうのはおやめなさい、リヒト王子」

「はーい」

「ま、まさか先に兄上とロッティが追いかけているとは……」

「でもよかったですよ、大きな騒ぎにならなくて」

「あ、あの……何かお礼にと思ったのだけど、こんなものしかなくて……」

おばあさんは、カイ王子と私にお茶菓子を手渡してくれた。

「ありがとうございます！」

「見たことないお菓子……嬉しい……！」

「そんな……どこのお宅にもあるお茶菓子だけど、喜んでもらえてよかったわ。
貴方がたもよかったら……」

「えっ、い、いえ。自分達は何もしていませんし……」

「いいえ。見ず知らずの私のことを気遣ってくれてうれしかった……これはそのお礼よ。
本当に……ありがとうね」

「………っ」

おばあさんと男の子とのお別れをする頃には、すっかり夕暮れになっていた。