熱い思い (ページ28)

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武正side

長かったツアーも今日で終わり。
ファイナルの東京公演だ。

このツアー中、時間があれば気づいたらずっとAのことを考えていた気がする。
彼女は今何をしているかな、元気に過ごしているかな、って。

でも、Aとは前ほど連絡をしなくなった。

ツアーが始まった当初、俺はメンバーの写真とか今日はここに来ていてこんなことがあった、とかをAに送るようにしていた。

けれど、Aの返信は前と比べて随分遅くなって、もしかして仕事が忙しいのかなって思うようになった。
それか俺のために気を遣ってくれたのかな...？
自意識過剰だったら恥ずかしいけど。

昨夜はファイナル前日だから、久々にAにLINEを送った。
食事に誘ったけど、断られた。
そんなに仕事が忙しいのかな、とも思ったけど、何か違和感を感じた。

避けられているような...

「武正っ！何ぼーっとしてるの！
ほらステージ行くよっ！」

「あっごめん！」

八木氏に声をかけられて我に帰り、俺らはステージに向かって飛び出した。

後ろまでたくさんの人、人、人。

Aはどこだ、

みっけ。

てっきり前の方にいると思ってたけど、1番後ろに立っているAを見つけた。

俺の正面のところにいてくれてる。
避けられていると感じたのは勘違いだったのかな。

かなり距離が離れているから彼女の細かい表情まては確認できなかったけど、久しぶりに姿を見れて胸が高鳴る。

会場の熱気はぐんぐん上がっていき、ライブが後半に差し掛かった頃、俺はAの異変に気付いた。
顔をタオルで隠したかと思えば、その隙間から見えている目から何か光ったものが見えた。

俺はそれが涙だと気づくことにあまり時間はかからなかった。
なんで泣いているの...？

Aは俺に泣いているところを見られないようにしようとしているのか、何度も何度もタオルで顔を隠していたけど、照明に照らされて涙が光って見えるからばればれだった。

そして、それから間も無くAはライブハウスから出てしまった。

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ライブが終わるなり俺は楽屋へ一目散に向かって、携帯に飛びついた。

あの後Aが気になりすぎて、あまりライブに集中できなかった。

【Aちゃん、今日うしろで観てた？
後半泣いて、出て行っちゃってたよね...？
心配になってLINEしちゃった】

俺の何も飾らない、素直な気持ちだった。
どうか返信がきますように...