72話 ページ31
時は前日の夕方まで遡る。
体育祭終了後の雄英は静けさを増していて、外に出れば赤色の太陽が沈もうとしているところだった。私は随分と長い間寝てしまっていたらしい。
貴｢あのね、お父さん、お母さん。…話があるんだけど｣
10年間ずっと逃げ続けていた轟家と向き合いたい。そんな思いで帰宅した私は、両親の前に座って真剣な表情をしていた。
父｢どうした？急にそんな改まって｣
母｢体育祭のことかしら。体育祭は惜しかったわね｣
貴｢ううん、違う、そうじゃなくて。…同じクラスに焦凍くんがいるって話、したよね｣
焦凍くんの名を出しただけなのに2人の表情は少し曇ってしまった。私の両親はいつも決まってこうなのだ。エンデヴァー関連のことを耳にすれば毎回思い詰めたような顔をする。
母｢…何か言われたの？｣
貴｢うんまぁ、端的に言うと身バレした｣
父、母｢｢…っ！！｣｣
貴｢ほんと凄かったよ。焦凍くんは私だと確定させるのに少し時間かかってたけど、炎司叔父さんなんてお母さんに似てるってだけで秒殺だったからね｣
両親が世間に血筋を隠してきたのは多分、私が傷付くことを恐れたからだろう。生傷が耐えない日々、苦しくて辛くて痛くても終わることのない稽古。普通の人間ならばトラウマレベルだし忘れたくなるような昔話かもしれない。
…でも、
貴｢今日、焦凍くんに身バレして…10年分の謝罪をしてきた。何で今まで黙ってたんだとか、心配したとか…兎に角いっぱい小言を言われたよ。
10年も皆に会えなかったけどさ、会おうと思えば会えたわけじゃん？それをしなかったのは私が弱かったからだったんだなって、今日試合した子に怒鳴られてやっと気付けた。
ねぇ、お父さん、お母さん。私、変わりたい。何をするにしても遅すぎることってないと思うから。私はもう一度、轟家の皆に会ってちゃんと話し合いたい！｣
揺るぐことはないこの決意。正直、焦凍くん以外の従姉弟が私をどう思っているかは分からないけど…前世という縛りから抜け出せた今、逃げるという選択肢はなかった。
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shelllove31(プロフ) - この作品は本当に面白くて！これからも応援してます！！ (10月18日 15時) (
レス) @page2 id: 306f7ebf5d (このIDを非表示/違反報告)
yuumin - この作品は神です！ 設定とか考えるのは難しいですよね・・・。 レーズンさんのほかの作品も読みたくなりました！ 頑張ってください。 (2022年11月24日 13時) (レス) @page2 id: a4f8ad7b79 (このIDを非表示/違反報告)
レーズン(プロフ) - ひまさんさん» コメントありがとうございます！ひぇ、小説も絵も褒めて頂けるなんてめちゃめちゃ嬉しいです…！悔いのないように最後まで更新頑張るので、これからも宜しくお願いします！ (2021年9月5日 23時) (レス) id: ec6c9ca54e (このIDを非表示/違反報告)
レーズン(プロフ) - リッパーさん» お返事遅くなってしまってすみませんでした…コメントありがとうございます！面白いと言って貰えて本当に嬉しいです。最後まで更新頑張るので、これからもどうか宜しくお願いします…！ (2021年9月5日 23時) (レス) id: ec6c9ca54e (このIDを非表示/違反報告)
ひまさん - あと、絵がとても上手ですね！羨ましいです。 (2021年9月3日 22時) (レス) id: 753d3bcd80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レーズン | 作成日時：2020年11月8日 17時
