風が鬼を愛するなんて【不死川実弥】

肆拾捌 ページ20

｢こんな地味な服なんて脱いでしまいなさい！！｣

何日経ったのだろう。陽光が入らず月明かりも入らない。

そもそも、私が浅草で鬼舞辻と交戦して何日が経った？

・・・腹を貫かれ、臓器がひしゃげた状態で何故私は生きてるの？なんて馬鹿なことは思っていない。


私は、あの晩。あの場所で鬼にされてしまったのだ。


眠っている間に、鬼の住み処に拉致された私は何故か上弦の鬼に手厚くされている

鬼舞辻がいない間。つまり人間として潜伏している間の世話を、上弦に任せられているのだ。


今日は、上弦の陸。


『・・・』

ボロボロになった隊服を脱ぎ、上弦の陸・堕姫が差し出した着物を着る。

｢反応が無くてつまらないけど、“氷雨”は美しい鬼だもの｣

“氷雨”・・・私が鬼舞辻につけられた、鬼としての名前らしい。

反吐が出る。


本当なら、今すぐ蹴飛ばして、ここから逃げ出したい。

けれど、ダメだ。

チャンスは１度しかない。逃げようとすれば、“自我が無いと演技している”事がバレて、今より厳しい監視下に置かれる。

感情で動くな。常に冷静を保て。

それに、いつか上弦の鬼と皆が戦うとき、情報が合った方が良いと思うから。


｢やぁ堕姫ちゃん！氷雨ちゃん！｣

｢童磨・・・どうしたの？｣


瞳には、上弦と弐の文字・・・上弦の弐か。


｢俺も氷雨ちゃんと仲良くなりたくて！堕姫ちゃんの着せ替えが終わるのを待ってたんだ！！｣

鬼は、虹色の瞳を細めて、空っぽの笑顔を浮かべた。

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