孤独なボクら (ページ6)

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自己紹介ページ6

3年2組の教室の前で先生の合図を待つ。

大きく深呼吸を繰り返していると先生から声がかかる。

「ほな、入っといで！」

教室の扉を開け、教卓まで歩く。

クラス中の視線が突き刺さるのを感じる。

しかし、そんなものをものともせずAは堂々と話し始める。

「はじめまして。大阪から引っ越してきました。鶴井Aです。
えーと、仲良くしてもらえたらうれしいです！
よろしくおねがいします！」

そう言い終えて、頭を下げるとパチパチと拍手の音が聞こえる。

「はい、よろしゅうね。席は後ろの空いてるとこ座ろか」

先生はそう言って1番後ろの窓側の席を指さす。

座席の通路を通って歩くとあちこちから声が投げられる。

その声に笑顔でよろしくと返して席に着く。

先生はAが席に着いたのを確認すると授業の準備を始める。

1時間目は算数らしい。

算数の教科書を出すと隣の席からあ、と声が上がる。

疑問に思ってそちらを向くと少年と目が合う。

「えと、それ、教科書ちゃうわ。」

自分が持っている算数の教科書を見せながら言う。

確かにAが持っている教科書と違っていた。

良く考えれば学校によって使う教科書が違うのは当たり前なのだが、Aの母親は何も用意していなかった。

どうしようかと考えていると隣から再び声がかかる。

「ボクのでよかったら一緒に見よ」

その申し出は新天地に1人のAにとって大変ありがたいものであった。

ありがとう、と一言言って机をくっつける。

その様子を見た先生が手を止めAに話しかける。

「あ、鶴井。教科書前の学校のやつか！
ほんならこっちで準備しとくからしばらくは御堂筋に見せてもらってな」

はい、ありがとうございます。とだけ返すと授業がスタートする。

隣の席の男の子は御堂筋というのか、などと考えながら授業を受ける。

授業スピードは前の学校よりも少々早いようで、途中少しつまずきながらも何とか飲み込んでいく。

そんなこんなでようやく終わりのチャイムがなる。