【愛してる、】センラ ページ22
今日、
俺を追いかけてたあの子は、
ほかの誰かのものになる。
俺の後ろをついてまわって、
話に付き合い構ってやれば
花が咲いたように笑うあの子が。
いつも俺を見上げながら歩き、
なんとなく頭を撫でてやれば
照れたように俯き受け入れるあの子が。
無防備に何も知らないでついてきて、
その身体に欲をぶつけれれば
ハジメテだったのだと啼いたあの子が。
俺は君が誰かのものになる式に招待されなかった。
汚点だと、俺の存在を消そうと思ったのだろうか。
告白もなく気づいたら始まってたなし崩しの関係に、
一方的に終わりを告げられたのが丁度5年前だった。
それ以降連絡をとることは一切無かった。
もちろん、会うこともなかった。
すっかり忘れられたのだと思っていたのに、
何年も変化することのなかった画面には、
新しく『来週結婚します』と表示されていて。
気づけば『祝わせてくれ』の文字が増えていた。
『式が始まる前、少しだけなら』
あの子が指定した1時間も前についてしまったから
何を言うか、昔を思い出しながら考えていた時。
──お久しぶりです、先輩。
あの子を見た途端、全部が飛んだ。
「結婚おめでとう」
「元気やった？」
「相手はどんな人なん？」
どうでもいい話題で時間を稼いだ。
なんて、言おうとしたんだっけ。
自分にとって興味無いことばかり口から出ていく。
──先輩、そろそろ、
あぁ、きっともう会うことはないんだろう。
俺の事は忘れて、幸せになるんだろう。
「愛してる、」
言うつもりもなかった言葉が零れ落ちた。
あの子は、苦しそうに眉をひそめた。
「知りたくなかった？」
わかりきったことを問いかけると、
弱々しく首を縦に振った。
俺はあの時間に囚われたままなのに、
勝手に1人で先に進んでしまうなんて許さない。
いい気味だ、と思った。
「お幸せにな、」
これできっと、あの子は俺を忘れない。
君は俺のものだから。
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作者名：ユズナ x他1人 | 作成日時：2015年4月5日 3時
