No.1 迎 ページ3
受験期シーズンを目前に控えた年始直後。
何かとバタバタと忙しないこの時期に、相澤消太はひとり校長室へと呼び出されていた。
そして、予想外の指令を言い渡されたのだ。
「今……なんと仰いましたか？」
「ん？相澤くんにロシアまで行って欲しいって言ったのさ！」
もう一度聞き返して、相澤は少々大きめのため息を吐いた。
この校長は、極稀に突拍子のないことを言い出すから本当に困る。
一時期は、何かと理由をつけてこのような指令を回避するために画策していたが、結局は承諾する羽目になるため、最近では専ら根津の言いなりともいえるような状態である。
今回は何をさせられるやら、と内心緊張していたが、根津が放った言葉は意外にも拍子抜けするようなものだった。
「今年度の受験者に1名国外の子がいるんだよね！雄英側からアポを取ったのに迎えがないだなんて失礼だろう？」
「……雄英側からアポを取った？」
「そうだよ！少々彼女の生まれが特殊でね、僕が現地に赴いて交渉しに行ったんだよね！」
「はぁそうなんですか」
根津がわざわざ1人のためだけに国外まで行くとは……どのような生い立ち且つ個性を持つ少女なのか。
相澤は予想を膨らませつつ、校長の机上に置かれた赤茶色の封筒を受け取るのだった。
「おや！行ってくれるのかい？」
「どうせ俺くらいしか行ける人員はいないでしょう」
「それもそうだね！ただ国外というのもあって拒否されるかと内心ハラハラしてたんだよね！」
「もう少し早めにお伝えして頂けると助かるんですがね……」
「ハハ！善処するよ！」
ほんとにこの校長は、能天気なんだか楽観的なんだか分からない。まぁそれで何とかなるだろうという考えがあっての言動なのだろうが。
「おっと！伝え忘れたことがあったんだった！」
「何です？」
「彼女ロシア国内で極秘裏に追われてる最重要人物だから！くれぐれも注意してね！」
「……はい？」
前言撤回である。
校長の突拍子もない言動に考えなんてないのかもしれない。
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作者名：かみなり猫 | 作成日時：2024年3月19日 18時
