出遭う ページ8
日差しが強く、暑い…
蝉がうるさい。
私は、五条先生のお使いの為、高専を出ていた。
『少しだけ、遠くまで行ってみようかな、』
車に乗り、少し走らせた。
窓を開け、吹かれる風がとても気持ち良かった。
ふと思う。
ーーー私、変わったな。戻れた、のかな。
以前よりも明るく、昔のように戻りつつあるのは自覚している。
きっかけはもちろん、信ちゃん、貴方だよ。
そんな事を考えた時だった。
ガードレールのない道路に突然、何かがゴロゴロと転がっていた。
『?』
路肩に車を止め、降りる。そして転がっていたものをしゃがみ込み拾う。
『レモン…?』
そう。ゴロゴロと転がっていたものは、レモンだった。
「す、すみません!!!」
頭上から、とても元気な声がした。女の声だ。
『ん?』
顔を上げると、金髪の女の子。
顔が真っ赤で汗がすごい。
『このレモン、あなたの?』
「そ、そそそそうです!大変申し訳ありません!!!」
小刻みに何度も頭を下げられる。
『落ち着いて。頭も下げる必要はない。とにかく先にレモンを拾おう。』
何個、あるのだろう。かなりの数だ。まさかこれ、一人で?
『どうして、こんなにも沢山レモンがあるの?』
「そ、そそそれは!ただ今部活の合宿中でして!!皆様のために蜂蜜レモンを作るべくご購入致しました!なのに私、落としちゃった…」
?
キリッとした顔からいっぺん、涙目になった。
『マネージャー?って事かな。大丈夫だよ、洗えば問題ないよ。』
「誠心誠意を持って洗います!あ!!すみません!お手を煩わせてしまって!!!!」
レモンを全て拾い終え、彼女に渡そうとしたが。
『袋、ある?』
「それが…先ほど破れてしまって…」
だから沢山、落ちてるのか。
『そっか。…学校はどこ?送ってあげる。そっちの方が楽でしょ。』
「そ、そんな!大丈夫です!払うのを手伝って頂いたあげく、送迎だなんて!マネージャーのしての示しがつきません!」
少し言っている意味がわからないけど、流石にこの量のレモン。袋が破れているなら手で運ぶことになる。
また道路に落としてしまい、それを拾うときに車と事故になりかねない。危険だ。
『気にしないで。暇だったから。ほら、乗って。』
「え、あ、うう。お言葉に甘えます…」
自分から言い出したものの、彼女の警戒心のなさに少し心配した。
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作者名:杏 | 作成日時:2021年12月6日 13時