3 (side みなと) ページ4
「この地酒はなぁ、佐藤さん家でとれた梅で作られてるのよー。
こっちの酒は、あの、隣町の――、誰だったかなあ、前田さん家か青木さん家の米だったと思うんだけんど」
そう言って、店長はお店の奥へ資料を取りに行った。
棚に並べられたボトルは緑、青、半透明、紫と濃い印象を受ける。
お酒の色が変わってしまわないように遮光性になっているのだ。
俺は店長の目がないことを良いことに、醤油皿にくんでくれた酒を小指ですくいとった。
あまりベタつかない液体は少しアルコール臭く、舐めてみるとツンとする。
「俺の好きな味ではないかな」
味、匂いともにメモ帳に書き記憶していく。
俺はまだ中学3年生でバイトを許されていないのだが、母・祖母ちゃんしか稼ぎ柱がなく御厚意で働かせてもらっている。
表向きはボランティアだが、裏では「お小遣い」程度で幾らか頂いている。
「あったあった。その青いボトルのお酒はね、工藤さんとこだったわ。隣の日本酒が前田さんね。どっちかっていうと、工藤さんとこのお酒は度数が濃くてのどごしも良いのよねえ」
そう言って店長は、また浅いお皿にちょっと注いでくれる。
匂いを嗅がせるためにしてくれるのだが、隙を狙ってちょびちょび味を見る俺はよっぽどの悪餓鬼かもしれない。
「あと、これが最近入荷した豊田ってお酒。味が深くて、年配の方なんかにお勧め」
「頂戴します」
御会計場で店長と話していると、常連の近藤さんやってきた。
年の割にピンピンしたその姿には尊敬出来る所があるが、利用頻度が半端じゃない。
「あらあら、いらっしゃい。今日もゆっくりしていってくださいねー」
「今日も坊主の顔が見たくってさ、女将さんに反対されながらも来ちゃったんだわー」
「ありがとうございます」
俺はここに居ますよ、とでも主張したかったのか軽く会釈する。
名前は覚えてもらっていないし愛想の良い奴に見られたい訳でもないのだが、俺目当てで来てくれる客は無性に嬉しく笑顔になってしまう。
「坊主、野球また今度しような」
「はい。お待ちしています」
近藤さんは俺の横を通り、いつもの濁り酒の棚へ足を運んだ。
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夏ミルク(プロフ) - 夏ミルクです。http://uranai.nosv.org/img/user/data/b/2/7/b2771ea544ee8ee95dc498968c3fc410.jpg←画像。みなとさんちょっと可愛くなりすぎましたかね??あぁみなとさんかっこいいよぉ!って描いてたらこうなりました!wwリクエストありがとうございました! (2016年4月12日 19時) (レス) id: cd92f3c289 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 詩桜さん» 返信遅れてすみません。読んでいただいてありがとうございます♪ 文についてもお話についても誉めていただいて感謝です。ありがとうございました(*^^*) (2016年2月15日 18時) (レス) id: 665ef5492b (このIDを非表示/違反報告)
詩桜 - 読ませていただきました!文才があってとてもうらやましい限りです(笑)イベントにも参加してくださって、ありがとうございました!!話にブレが無く、現実離れしているところも無くて、とても読みやすかったです!!これからもがんばってください!!応援してます! (2016年2月15日 17時) (レス) id: d76ccfa709 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 夜鬼 神羅さん» 初めまして(o^O^o) 楽しんで読んでいただけて、レイチェルも嬉しいです!みなとと六花は善きヒロインと主人公だったのではないかと。お読みいただき、ありがとうございました♪ (2015年10月23日 21時) (レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
夜鬼 神羅(プロフ) - キャラクターの個性がハッキリしていて、性格なども安定していたのでとても読みやすく、みなとと六花の心情もよく現れていて、とてもいい作品だと思います!読ませて下さって、ありがとうございました!!!楽しかったです!! (2015年10月23日 18時) (レス) id: 8b627dd71d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ:https://twitter.com/seshiru777777
作成日時:2015年8月8日 21時