2人のお兄ちゃん 7

真面目な話 ページ18

ｹｲｼﾞ side



｢1つ、聞いてもいいですか？｣



不意に萌云がﾉﾌﾞに声を掛ける。



｢ん？｣



｢全然違う人を演じる時、どうやって気持ちを吹き込むんですか？｣



いきなり、まっすぐな質問をぶつける萌云。



｢俺はとりあえず何の知識も入れずに、台本をひたすら読むかな。自分なりのｲﾒｰｼﾞも大切だけど、監督さんのｲﾒｰｼﾞも大事だから、作り上げようとしなくても大丈夫だよ｣



ｲﾒｰｼﾞ…。ﾉﾌﾞの言葉を、正面から受け取ろうとする萌云が ﾉﾌﾞの言葉を聞き逃すまいと、小さな声でなぞっていく。



｢なんだろう。事務所にお世話になるって決めた時、表に立つこととか、考えもしないで、返事しちゃったんだよね…。早まった気がする｣



｢後悔してんの？｣



｢後悔というか…。萌云が、出来ないってなったら、ﾋﾛさんにもお兄ちゃんたちにも迷惑かけることになるんだよ？そりゃ…｣



本当にｺｲﾂはつまらない事考えて、自分にﾌﾟﾚｯｼｬｰを与え過ぎなんだよ。



｢ﾊﾟﾊﾟﾏﾏがお空にいる分、生きることの意味を人よりは考えてるかもしれないけど、命のｺﾞｰﾙを宣告された時、どう考えてどう動くのかなんて、想像も出来ないし…行き当たりばったりでｸﾘｱ出来る程、演じる事に対する経験値もないし…あーー、も、無理｣



そう言ったと思ったら、俺の目の前にあった、ｶｸﾃﾙを一気に飲み干し、机に突っ伏した。



｢え？大丈夫？？｣



｢あー、大丈夫だよ。ごめんな、折角時間作ってくれたのに…。少し寝かしたら、落ち着くと思うから｣



｢いえ、俺は大丈夫ですけど…｣



｢ﾉﾌﾞは、俺らと萌云の事、知ってる？｣



｢血が繋がってない…ですか？｣



｢あー、だからなのか俺やｵﾐに迷惑かけたくないって頑張りすぎるんだ。ﾋﾛさんも、それを心配してて萌云だけなら、断るつもりだったらしいんだけど、ﾉﾌﾞが居るから受けたって、今回の話。それで…さ？｣



｢分かりました。俺が何か出来るとは思えないですけど、気になる事があったら、ｹｲｼﾞさんか、ｵﾐさんに連絡します｣



｢ごめんな？ありがとう｣



｢いえ、本当に大切なんですね｣



｢ん？まーな。萌云を守れるのは俺らだけだから｣



寝落ちた萌云を横に、ﾉﾌﾞと2人で話し込んだ。



｢んー…？｣



｢おはよ(笑)｣



｢え？？｣



｢ばーか。俺のｶｸﾃﾙ一気呑みするから、寝ちまうんだよ｣



｢ｶｸﾃﾙ？一気呑み？｣



覚えてねーのかよ(笑)

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