2人のお兄ちゃん 4

兄の想い ページ6

ｹｲｼﾞ side



ｵﾐも希愛も、俺んちに帰ってきた。いつもはお喋りな希愛は口数が少なくて、それにつられるように俺もｵﾐも、何も言わなかった。



どれくらいの時間が流れたのだろう。突然、希愛が震えだした。



｢希愛？｣



｢希愛、どうした？｣



俺とｵﾐが声をかけるけど、希愛はただ震えるばかりで、そんな希愛をそっと膝に乗せ抱きしめた。心配そうなｵﾐは、黙って希愛の頭を撫でてる。



少し落ち着いてきたのか、途切れ途切れで話す希愛。



凄い勢いで走り回る車を見つけた時、子どもたちを別の所に居た先生のところまで、競争させ遠ざけて、今の車の位置を確認しようとした.......そこで記憶はないらしいけど、その車が暴走してる場面が頭の中で何度も何度も、再生されるんだと。



車を運転していたのは、自暴自棄になった若者で、誰でもいいから道連れにしたくて、お酒を呑み、車を走らせたと聞かされていた。そんな馬鹿げた理由で、車を暴走させ、自分はｴｱｰﾊﾞｯｸに守られ大した怪我もしていない。巻き込まれた希愛は、身体のあちこちに痣があり、腫れもある。もしかしたら、もう二度と会えなかったかもしれない.......。



震えながら、ただ ごめんなさいと繰り返す希愛が、怪我以上に痛々しくて、なんで希愛ばっかりがこんな荷物を背負わなきゃいけないんだよ.......



落ち着いては、思い出す。思い出しては震える。それを繰り返す希愛。俺らは抱きしめることしか出来ない。記憶を消してやることが出来ればいいのに.......。



｢希愛？やっぱり暫く、休もう？｣



責任感から仕事に行くと言い張る希愛に、優しくｵﾐが声をかける。



｢いく.......｣



｢希愛？仕事中に、嫌なｼｰﾝが頭に浮かんだらどうするの？子どもたちを守りたいなら、希愛の心が元気じゃないと、守れないよ？｣



｢でも.......｣



｢でも？｣



｢1人に.......なりたくない.......｣



｢事務所に来ればいいじゃん｣



｢ﾋﾛさんとか、皆さんに迷惑かけたくない｣



こいつはどこまでﾊﾞｶなんだろう.......



｢希愛？兄ちゃんもｵﾐも、ﾋﾛさんたちも、希愛が1人でしょいこんで、我慢してる方が心配だし、迷惑なんだよ？｣



｢希愛？お仕事休んで、一緒に事務所に行こう？今は、希愛が安心感を与える側じゃなくて、与えて貰う側なんだよ。そうやって、甘えて貰った方が、俺らは嬉しいんだよ？｣



俺らの想い、届け。

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