貴方と同じ、普通に生まれたかった【北信介】【呪術廻戦】 (ページ38)

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私は、呪術師だからページ38

信ちゃんの誕生日を祝ったその帰り。

私は、信ちゃんの横を歩いていた。

周りは完全に私たちが恋人かのような雰囲気で、送り出す。

「信っ信介ええぇ！幸せになぁ〜！」

何故あの黒人さんは、涙を流しているのだろう。

「信介〜！よかったなぁ。」

何故、あのツンツン頭の人(赤木さんです。)は、ハンカチを振っているのだろう。

「おめでとうさん。」

何故、あのでかい人は、目が真っ赤なのだろう。

私は理解不能のまま、彼と一緒に校門を出た。

＊

「こうやって、一緒に帰るのも10年ぶりやな。」

『そうだね。』

その帰り道は、本当に、ゆっくり、ゆっくりと、時間が遅く感じた。

「家、こっちで合ってるか？」

『うん。』

私が今住んでるアパートへと向かう。

学校からはすぐの距離。

つまり、彼ともすぐに別れてしまう。

「なあ、少し寄り道してもええ？」

『うん。』

いいよね。彼の誕生日だもの。今日くらい。許されるよね。

＊

彼に着いていくと、そこは、私の、かつての家だった。

「懐かしいなあ。」

またこうして、彼とここに来るとは。

『……』

時がまるで、戻ったよう。

「昔は、あんなにも泣き虫やったのに…すっかり大人になったなあ。俺も、お前も。」

『…違う。』

「ん？」

『私は…大人になってない。進んでない。進まない。大人になったのは、貴方だけだよ。』

「…何言うとるん。お前ももう19歳やろ？俺よか立派な大人や。」

年齢ばかりが、増えていく。それだけ。

気持ちは、未だ、子供のままだ。

『それでも…私はまだ、進めていない。』

「…なあ、手、繋いでもええか？」

そう言って、私が答える前に、彼は私の手を取った。

あの時よりも大きく、固くなった手。

「ははっ。ちっこい手やなあ。」

もう。…無理だ。

『信、ちゃん…。』

「！なんや？」

彼は、私の目線に合わせて低く屈み、優しい表情を浮かべる。

『私ね、わたし、ね…』

「うん。」

『私、信ちゃんと、一緒にいたい。ずっと一緒に、いたい。ごめんね…っ』

視界が、ふやける。

頬に、冷たい何かがつたう。

そうか、私、泣いてるんだ。

泣いたのは、いつぶりだろう。

「俺も、同じ気持ちや。ずっと一緒に居たい。そばに居たいよ。」

なんで、こんなにも優しいのだろう。

『うっ…。でも、無理なの。許されない、の。』

「そんなはず、ないやろ。」

彼は、私が何度言葉を止めても、ゆっくりと、待ってくれた。