貴方と同じ、普通に生まれたかった【北信介】【呪術廻戦】 (ページ33)

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ひとときページ33

「なぁ、虹。久しぶりに婆ちゃんに会わへんか？会いたがっとったで。」

信ちゃんの、お婆ちゃん。

とても優しくて、穏やかな人。

会いたい。会いたい、けど。

『遠慮しとく。』

「…そうか。」

ごめんね。もう、会えないよ。こんな私じゃ。

信(まだ、…だめなんや…。)

＊

平和な日々は続いた。

信ちゃんと、お昼ご飯を食べるようになった。

「なあ、いつまで長袖なん？もう夏になるし、かなり暑いで？無理せんと、カーディガン脱ぎ？倒れるで？」

6月の終わり。

季節は夏へと移り変わる。

気温は28度。

確かに、とても暑い。

周りはほとんど半袖を着ている。

『気にしないで。大丈夫だから。』

「せやけど、心配や。」

『……。』

見られたくない。貴方に、傷だらけの私なんて。

「…ほら、口開け。また今日もそれしか食わんのやろ？」

信ちゃんは、いつも弁当の具を私に食べさせようとする。

『大丈夫。これで足りむぐっ…美味しい…。』

お婆ちゃんの手作りの高野豆腐だろうか。

とても味が染みていて、美味しい。

「ふふっ。よかったわ。」

ああ、平和だな。平和、すぎて、怖いな。

本当に、いるのだろうか。この学校に呪霊なんて。

2ヶ月もこんな、放置されていいのだろうか。

こんな、幸せで、いいのだろうか。

信ちゃんは、ずっと待っててくれる。

あれから一度も、聞こうとしない。

優しすぎて、その優しさに甘えてすぎてしまっていて、罪悪感が募る。

ごめんね。

きっと、私は貴方に言えない。

言えないのに。

ああ、貴方と同じ、普通の人間になりたかった。