お願い ページ31
周りの視線が日々痛く感じる。
まあどうでもいいけど。
あれから一週間が経つ。
時が経つのは早いものだ。
今日ももうすぐ終わる。そう思っていた。
「虹。」
名前を呼ばれ、振り向いた。振り向かなければ良かった。その声が誰のものなのかくらい、わかっていたのに。
「虹。少し話せるか?」
信ちゃん。
「貴方と話すことはない。さよなら。」
「俺はあるんや。なあ、頼む。」
昔から、私は信ちゃんに弱い。
普段、人をあまり頼らない信ちゃんの頼みには、弱い。
「す、少しなら。」
「…!ありがとう。」
嬉しそうな顔をした信ちゃんを見て、私は少し心が温かくなった気がした。
*
「それで…何?」
「なんべんも考えたんやけど…わからへんのや。お前が俺に冷たくする訳も。お前がそーなってしまったのも。言ってくれへんと、教えてくれへんとわからん。だから教えてくれ。…家族が亡くなったことに、関係あるんか?」
優しいな、信ちゃん。
考えてから、聞いてくれる。
それは昔から。
話してしまいたい、本当は。
また戻りたい。あの頃に。
「いまは、…はなせない。」
「…それはつまり、いつかは話してくれるってことやな?」
「……。」
「ほうか。なら待つ。ずっと待っとる。だからゆっくりでええよ。ありがとうな。…でも、たまにでええから、話したい。そばにいたい。それは許してくれへん?」
いいよね、それだけ、なら。
こくりと、縦に頷く。
「!ほんま?ほんまか?嬉しいなあ。ははっ!」
彼は、笑った。
その笑顔は、私が大好きだった、昔と変わらない笑顔だった。
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作者名:杏 | 作成日時:2021年10月22日 14時