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理由2 ページ18

彼は、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。

そして私が座る席、机の前に立った。



《どうして?バレてるわけ、ないのに。》



それだけで周りの視線が痛いほど、伝わる。

勘弁してほしい。目立ちたくないのに。


「な、なあ、」

彼の声だろうか、上から声がした。


そっか。あれから10年が経っているんだもの。

男の子だもの。声変わり、するよね。


低くて、優しい、落ち着く声。



「こ、虹…?」

名前を、呼ばれた。顔を上げてしまった。

それが、よくなかった。いけなかった。


「虹…虹…やな…っ。」

彼の、瞳が揺れた。

今も変わらず、綺麗な、目。

「今まで…なにしてたんやっ。ずっと…探してたんやで…虹っ…。」

その言葉と共に、子供の頃よりもずうっと広くなった彼の腕の中に閉じ込められた。





大きくなったね、信ちゃん。




でも、私はもう抱きしめ返すことも、貴方の手を取ることも、できないから。






ごめんね。







彼の腕を振り払う。







『貴方、誰ですか。いきなり抱きついてきて、気持ち悪い。出てってください。』


彼に向けたことのない、視線を向ける。


彼が、とても傷ついた顔をしていた。
泣きそうな顔を、していた。






ああ、ごめん、ごめんね。



でも、仕方ないの。







私はもう、あの時とは違う、


貴方の知ってる泣き虫で、臆病な虹じゃない。




そんな私はもう、死んだの。



いないの。






だから、ごめんね。









早く、私を忘れて、

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作者名: | 作成日時:2021年10月22日 14時

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