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「カティ・ミュクラは妾の愛弟子よ、素晴らしい子でしょう。ふふ。確かに雰囲気は少し妾に似ているかしら?……本当に立派に育った。あんなに小さかったというのにね、時の流れは恐ろしいわ。此処に、彼も居ればどんなに良かったか─────」
「お前にも人を愛する機能が備わっていたとはね。まあ、恐ろしい。レディをそんな顔で凄まないで?うっかり手折られてしまいそう。」
「あら、無様だこと。妾がこの手ずから忠告したというのに何故備えないの?カード占い如きとタカをくくった所かしら、ああ、愚かしいわ…占術という分野はご存知?なんてね。今後はどんな言の葉も警戒したらどう?無知を晒さずに済むかもしれないわよ?」
「……また、怖い夢を見たのね。おいで。大丈夫、大丈夫よ。あれはもう何百年も前のことなの。全部終わったこと……貴方を責める権利など、誰も持ち得ないわ。さあ、眼を閉じて。楽しいことを考えましょう、明日は何をする?妾はそうね、貴方と2人でお茶会がしたいわ。生徒たちを眺めながらゆるやかな時間を過ごしたい。……眠りは輝かしい明日を連れてくるのよ。貴方が思うほど、悪いものではないの」
「施しは結構よ。何年この姿で生きてきたと思っているの」
「妾の前ではみな子供のようなものだわ。勿論、貴方とて例外では無くてよ。」
「昨晩?ああ、そういえば眠った記憶がないわ。早急に検証したい事があって。徹夜は効率的なのよ あくまで妾に限った話だけれど。終夜限界まで時間を使えるもの」
「……仕方がないでしょう、此方の方が落ち着けるのよ。変成術の常用なんてしていたら、いくら妾でも疲れてしまうもの。」
「…丁度いいところに。今妾は彼処の本が読みたいの。あとは、分かるわね」
「これでも、昔よりはずっと表情豊かよ。」
「そう、いい子ね。妾はいい子にはご褒美をあげる主義なの」
「恋占い?構わないわよ、妾がお前に道を示してあげましょう。ああ、でも。どのような結果が出ても後悔しないと誓えるかしら。」
「あまりお母様を困らせないで。…これでもお前を案じているのよ」
「血族たちは皆、妾を嫌ったわ。こんな状態で成長が止まった妾を魔法使いの恥さらしだと罵って、不良品みたく扱うの。……それでも 1000年も生きてやった。血族は皆死に絶えたけれど、妾は今日も此処で立っている。ああ残念、どうして死者は話せないの?いまどんな気持ちか毎日でも聞きたいくらいなのに」
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作者名:やまざき | 作成日時:2020年6月29日 23時