【HQ】こもりくんとこほりちゃん【井闥山】 (ページ44)

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＊extra edition2＿咲けなかった蕾ページ44

バレー雑誌を読みながら、コロコロを転がしていると、
タンタンタンという聞きなれた足音が耳に入った。

来るであろう人物を予想しながら、顔をドアに向ける。
その瞬間、勢いよく開けられたことに眉根を寄せた。

「臣(おみ)くんっ！！」

「うるさい。埃がたつ」

「はい。ごめんなさい」

開けたときの勢いが嘘のように萎み、
ドアを開けながら律儀に部屋の外でコートを脱ぐ幼馴染。

そのコートをたたんだあと、流れるように手を消毒していく。

そして部屋に入ってきたのを見て、声をかける。

「何しにきた」

「これを......」

そおっと差し出してきた箱に、“またか”、とため息をはく。

「......今日はなに」

「趣向を変えてオランジェです！」

「ふーん」

かぱっと開けるとキラキラと光るオレンジ。
その半分ほどにかけられたチョコ。

美味しそうだな。今日“も”。

ひとつまみするとほどよい甘さが口の中に広がる。

「どう？」

「美味しい」

「そっかあ」

ちゃんと思ったことを言ったのにも関わらず、
何故か肩を落とす幼馴染。

なんでだよ......。

昔からそうだった。

ちゃんと答えているのに、

時には困ったような顔で

時には悲しそうな顔で

笑みを浮かべる幼馴染を何度も見てきた。

笑ってほしいのに、笑ってくれなくて。
だからといって笑ってくれる術を俺は持ってなかった。

長くいたのに。あいつよりも......。

浮かんだ顔に、悔しく思うものの、
あいつだから、と納得する自分もいた。

最後の一個を食べ終え、ごちそうさまと言う。

「お粗末様です」

「で、それにすんの？」

「うーん......」

結局悩むのかよ、という言葉は飲み込む。

何かとネガティブ思考な幼馴染はすぐに落ち込む。
そして、俺は慰める術も知らない。

知らないことばっかだな......。

うーん、うーんと唸る幼馴染を横目に
昔のことを思い出す。