＊episode37＿好きです。 ページ39
「おっっっそ」
「あはは......すみません」
開口一番言われた言葉に何も言い返せない。
というか、さっきから俺にだけ殺気をとばしてくるんですが。
隣にほりちゃんいるんですが、関係ないですか。器用ですか。
なんて
つい先程付き合えたのに一気に破局コース......。
言いません。というか、言えません。
ぐすぐすと泣いているほりちゃんには柔らかな眼差しを向けつつ、
隣にいる俺に対しては周りが近づけないほどの殺気を放つ晩葉に、
とりあえず、苦笑だけしておく。
ていうか、ほりちゃん......そろそろ泣き止んで。
「A、そろそろ泣きやみな」
「だっでえええ、うれじくでええ」
「顔が汚い」
「ひどいいいい」
ハンカチで涙をぬぐう晩葉に、
わああっと抱きつくほりちゃん。
顔がくしゃくしゃなのはもうご愛嬌だろう。
ていうか......羨ましい。
思ったことが顔に出たのか、晩葉に鼻で笑われた。
うわぁ、ムカつく。
ムカつくけど何も言えませんよ、はい。
これからもされるであろうこの光景に、頭を抱えそうになったとき、
後夜祭のメインイベント。花火が打ち上げられた。
「わあっ」
「一日目も終わりだな」
「だなあ」
晩葉、ほりちゃん、俺の順で並びながら、
空を彩る花々を眺める。
チラリと横を見れば、彼女の瞳にも花火が打ち上げられる。
涙で深くなった藍色に描かれる花が本当に綺麗だ。
暫く彼女を見ていると、ほりちゃんがこちらを見た。
パチリと目が合い、ほりちゃんの顔がボッと赤くなる。
たぶん俺も......顔が暑いから、赤いんだろうなあ。
ふい、とお互い気恥ずかしさから横を見る。
だが......。
チラリとまた視線を戻す。
赤く染まった頬。
彼女もチラチラと俺を見る。
その姿に愛しさが募る。
ああ。本当に可愛い。好きだ。
ふっと笑みを浮かべ、すぐ“そこ”にある、
細くて柔らかい“手”を握る。
瞬間、発火しそうな熱を感じながら、指を絡める。
「あ......」
「......」
ポツリと溢した声に、彼女の顔を伺う。
もう赤いのはお互い様だからこの際気にしない。
戸惑うように視線をさ迷わせた彼女は、
ぎゅっと目を瞑り、開ける。
ふわり、ほわり。
照れくさそうに笑いながら、彼女は握り返してくれた......。
「好きです」
「俺も」
顔を見合わせて笑いあったとき、祝福するように花火がまたあがった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星蛍 | 作成日時：2020年3月31日 14時
