*episode34_いってらっしゃい ページ36
沸き立つ歓声に、懐かしい気持ちがよみがえった......。
.
.
ガクガクする足をなんとか動かして、彼を探す。
すると、向こうも探してくれてたのか、すぐに見つかった。
「お疲れ」
「わ、ありがとう」
はい、と手渡されたキンキンに冷えたパックのオレンジジュース。
それをありがたく受け取ろうとしたとき、
限界がきたのかカクンと膝から落ちた。
「ほりちゃん?!」
「あっ」
寸でのところで腕をつかまれ、尻餅は免れた。
もりくんは苦笑しながら、両手をひいて近くのベンチに座らせてくれた。
だが、彼は座らず、何故か私の目の前に立つ。
それに首をかしげていると、
もりくんは首の後ろに手をやりながら、あー、と声を漏らした。
「まだ着替えないんだね」
「あ、うん」
その言葉に私は自分の姿を確認する。
眼鏡なし。少し乱れたポニーテール。
汗で張り付く赤のTシャツ。
ふんわりは保たれた同色のスカート。
や、やっぱり、着替えるべきだったろうか......?
ぐっとスカートにおいた手に力を込めながら、先程のことを思い出す。
出番を終えた後、友達にお礼といって
彼女のクラスの割引券をもらった。
「ほんと、助かったよ!!」
「
「いえいえ。でも、一回転んでしまった......」
彼によって落ち着いた心。
だが、いつもと違う場所で眩んだのか
それとも汗で滑ったのか一回転んでしまった。
そのときは高揚と興奮でなんとも思わなかったのだが、
今頃になって恥ずかしさが襲ってくる。
顔を両手で覆うと、友達はあはははと声をあげて笑った。
「気にしない気にしない」
「楽しかったしいいんだよ」
その言葉にじーんとしていると、
それまでやや一歩後ろで静観していた
「A、古森のとこにいったら」
「え? あ、ああ、そうだね! 早く着替えなきゃ」
初め何を言ってるのかわからなかったが、
いろいろと心配と迷惑をかけたのでお礼をいいにいかなければと思い立つ。
更衣室に向かおうとしたとき、
友達がガシリと私の腕をつかんだ。
「ほり......そのままいきな」
「へ?!」
「そーそー。汗だけふいてそのままいき」
「制服は私が隠したから」
「なんでっ?!」
ニマニマと笑う友達と優晴ちゃんに急かされ、
仕方なく、汗だけふいてそのままもりくんのとこへ向かった。
*episode35_涙と一緒にこぼれた言葉→←*episode33_あ り が と う
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作者名:星蛍 | 作成日時:2020年3月31日 14時