＊episode31＿どこまでも一緒に。 ページ33
少し乱れた息に、額に浮かぶ汗。
ところどころ汚れたブレザーに、顔が歪む。
「ほりちゃん......」
「っ......」
パシンッ
静かに響いた拒絶の音。
優しく私の名前を呼んでくれた彼の目がみるみる丸くなる。
弾いた手が、不自然に宙に浮かぶ。
それを見て、ますます涙がこぼれる。
「…やっ」
「っ......」
見てられなくて顔を背ける。
気配で息を飲んだのがわかった。
情けない。
自分の決意を貫き通せないことが。
情けない。
自分を信じてくれた人を裏切っていることが。
情けない。
結局何も変われない自分自身が......。
ボロボロこぼれる涙を力任せに拭っていると、
パシッとその腕を掴まれた。
びっくりして、反射的に振り向けば、
いつぞやの____ダンスを見られたときの___ような“近さ”。
視界いっぱいに写るもりくん。
驚きで涙も引っ込む。
するりと、動いた彼に過敏に反応する己の体。
気にしないようにというより、
気にする余裕がなくなるくらいダンスに打ち込んだ。
けど、“あのとき”のことを忘れてたわけでもない。
むしろ、忘れることも気にしないこともできなくて。
毎日ときおり思い出しては心臓が忙しなかった。
これでもかと、縮められる距離。
あと数�僂鬚阿辰抜�えるように、我慢するように
息をはいてとまったもりくん。
そして、優しく微笑む。
いつものように。私と目線を合わせて屈むときのように。
「なら、“逃げる”？」
「......えっ」
発せられた言葉に、息がとまる。
すっといつの間にか頭の後ろに添えられた手により、
コツンとお互いの額と額を合わせられる。
「嫌なら逃げよう。怖いなら無理しなくていいよ」
「な、にを......？」
突然のことについていけない。
でも、後頭部に回った手と腕をつかむ手が私をとらえてはなさない。
「いったじゃん？ ほりちゃんが“どうしたいか”が大事だって」
「っ......」
「嫌なら逃げよう。一緒に帰ろう」
“いつもみたいに”。
優しい言葉。甘い囁き。
私の感情を第一に考えてくれた“それ”に、すがりたくなった。
けど、
___「同じだよ。それだけだよ」
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作者名：星蛍 | 作成日時：2020年3月31日 14時
