＊episode25＿文化祭マジック！ ページ27
一日目は一般公開をしないため、学生のみ。
「けど、結構にぎわってんね」
「こんな不衛生の中、作られたものを食うとか」
「客が減るようなこと言わないでくれる」
「まあまあ。んぐ......うまっ」
流石ほりちゃん、と続ければ、
相変わらず、辛辣だ......。
そう思うも晩葉に言えるわけもなく、苦笑だけ。
だが、目の前の彼女は俺なんて見ておらず、
教室のドアの方を見て、あ、と声を漏らした。
ん？ と振り向くより早く、ふってきたソプラノ。
「もりくんっ」
「ほ、りちゃ......」
パタパタと短い距離にも関わらず、
人に何度かぶつかって駆け寄ってくる彼女。
銀色のトレーを落としそうで周りがハラハラしている。
いつもだったら大丈夫？ と声をかけるが......。
「来てたんだって、もりくん？」
「......へっ？！」
ひらひらと目の前で手をふられ、我に返る。
裏返った声に恥ずかしくなり、顔を片手で隠す。
でも、と指の間から覗き見る。
なんてことない。
制服の上から着られた水色のエプロン。
頭には白地に青の水玉模様のバンダナが三角巾代わりに巻かれていた。
そして、いつもの藍色の眼鏡。
いつもと違うところと言えば、右頬が少し白くなっており、
銀色のトレーを大事そうに抱えている。
なのに......。
「あー、かわいい」
「本人にいえ」
カステラをもっていくよう言われて来たみたいで、
クラスメイトのところへいき、トレーを手渡しているほりちゃん。
いつもと同じ。
癒される笑顔。仕草。声。
はああ、と机に撃沈しながらため息をつく。
上からふってくる2つの冷たい声は聞こえない。
キラキラしている。
祭りで見た彼女の瞳みたいに。
キラキラして見える。
「〜〜っ、文化祭マジック恐るべし」
「ばーか」
「......チッ」
「あの......酷すぎません？」
＊episode26＿こっち見て…→←＊episode24＿目がマジでした。
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作者名：星蛍 | 作成日時：2020年3月31日 14時
