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*episode22_同じだよ? ページ24

眼鏡を彼女にかけてあげ、
あのときのことを話終えると、彼女は首をかしげていた。

たぶん、覚えてないのだろう。ほら、こういうところ。
何気なく出来ることじゃないのに、さらっとやってのける。

クエスチョンマークを頭に浮かべまくる彼女。
その頭を撫でながら、笑いかける。


「ほりちゃんは“勇者”だよ」

「......え」

「ちゃんと強くて勇気がある」


眼鏡の奥の藍色が丸くなる。

さっきまでの陰が薄まった気がする。
あともう少し。あともう一押し。


「でも......私は、」

「ほーりちゃん」


俯く彼女の肩をつかみ、向き合わせる。

少し空気が軽くなるように、
まるで何かを教えるように人差し指をたてる。


「ほりちゃん、俺の名前は?」

「へ? こ、古森元也くん」

「うん。何部ですか?」

「バレー部......え、えっと?」

「まあ、なにが言いたいかっていうとね」


少しキザ過ぎた。

あんまりも真面目なほりちゃんにだんだん恥ずかしくなり、
人差し指をそのまま頬へ持っていき、かく。あー、決まんない。

でも、言いたいことは変わらない。


「“それ”だけってこと」

「それだけ......」

「うん。ほりちゃんの前にいる俺は井闥山学院1年バレー部。
ポジションはリベロの古森元也で、それだけだよ。ね」

「っ......」


光が戻った藍色に、ほっとする。


彼女が俺、佐久早、晩葉に距離を取っていたのは知っていた。

1年にしてスタメンの俺と佐久早。
加えて佐久早はバレー界では有名人。
晩葉もバドではかなり強いと聞いた。

ほりちゃんは俺達をどこか違う人と見ている。


でも、


「同じだよ。それだけだよ」

「......うんっ」


あー、泣かせてしまった。
震えた声に、肩に、やってしまったなと思う反面、
あまり話さないほりちゃんについて知れて嬉しかった。

ごしごしと眼鏡も外さず擦る彼女の手をとめて、
そっとテンプルをもち、彼女の壁をとりさる。

こぼれる雫に、ハンカチなんて気のきいたものは持ってないから
ワイシャツの袖口で優しく拭ってやる。


「あー、擦ったからは、れて......」

「っ......」


そこではたと気づく。

お互いの顔の近さ。
熱をもった頬と赤くなった耳。

やばい。

伝染したように自分も暑くなったのがわかった。
そして、警鐘が鳴る頭で、
彼女の唇が目に入ったらもうダメだった。

伸ばした手が触れ、


「おい、何してんだ」

「......」


なかった。

*episode23_トラウマなんだろうなあ…→←*episode21_彼女にとっては当たり前



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設定タグ:ハイキュー!! , 井闥山学院 , 古森元也   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:星蛍 | 作成日時:2020年3月31日 14時

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