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*episode18_ダンスダンスダンス ページ20

ひとしきり謝り倒した俺達の間には今、
何とも言えない空気が流れている。

いや、そりゃそうだよね。
不可抗力とはいえ、バッチリ見ちゃいやいや思い出すな。

片手を額に当てながら、
さっき見てしまったものを必死に消す。

ついで、このままでは煩悩にやられそうなので、
未だ顔の赤い彼女にそっと話しかける。


「ほりちゃん、ダンスやってたんだね」

「は、はひっ。少しだけ」

「そうなんだ。上手で見いっちゃったよ」


偽りない本心。

まだ顔を合わせるとさっきのがちらついて
赤くなりそうなのを必死におさえる。


だが、「上手で」という言葉に肩を揺らした彼女。
それに俺は動揺がまだひいていなかったせいか気づかなかった。


「もしかして後夜祭で踊るの?」

「......いや、私じゃなくて友達が」

「え、そうなの? なら、習い事?」

「あ......ううん。振り付けの指南を頼まれて」

「え、すごっ」


なんてことない会話。

だが、張りつけたような笑みの彼女に
そこでやっと様子がおかしいことに気づいた。


「......そんなことないよ」


ワントーン落ちた声色に、陰を落とした瞳。
縮こまっていた体がまた小さくなった気がした。

このまま続けるべきか、否か。
すぐに気づかなかったのもあり、言葉につまる。

視線を宙にやりながら、悩んでいると、


「......若かりし頃」

「あ......」


膝を抱えながら呟かれたソプラノ。

ていうか、若かりし頃ってまだ16だよね?
という突っ込みを心の中でいれる。

だが、それもいつになく真剣というか、
感情のない顔に、自然とこちらも真面目な顔になる。


「母の友達がダンスをやっていて、その繋がりでスクールに通ったの。
振り付けを覚えるのが得意で、出来とか関係なく、夢中で楽しかった......」

「うん」


目元を綻ばせる彼女に、本当に楽しかったのがわかる。

だが、その瞳から陰は消えておらず、
それだけじゃなかったのだろう。きっと......。


少しだけ震える肩。

悩むように開閉する口。
だが、意を決して開かれた口。

それに耳を傾ける。



ちゃんと聞くよ。

必死に紡ごうとしているのがわかるから......。

その懸命さが......“愛しい”から。

*episode19_自分の根幹→←*episode17_暫くお待ちください。



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設定タグ:ハイキュー!! , 井闥山学院 , 古森元也   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:星蛍 | 作成日時:2020年3月31日 14時

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