〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

…３ ページ8

 


(何だ、コレは――)

 どうしてか、とてつもなく、モヤモヤする。

(ああ、そうか)

 嫌(イヤ)なのか。と理解した。悟と浅上さんが関わり合う事が嫌(イヤ)なのだと、私は理解する。

 コレが、独占欲(どくせんよく)ってヤツなのだろうか？

 そうだとしたら我(われ)ながら浅(あさ)ましいな。と私は心の中で自嘲(じちょう)した。 


「……浅上さん」

 そう名前を呼べば、彼女は視線(しせん)を私に向ける。

 君が、私だけの者であればいいのにな。

 そんな事を思ってしまう私は、どうすればいいのだろう。


「五条悟のこと、どう思う？」

「どうって、何？」

 ……なんでアンタ、少し悲しそうなわけ？ と浅上さんが続けて訊(たず)ねる。

「――そう、見えるかい？」

 困ったように眉(まゆ)を八の字にしてるのは自覚している。そんな顔で、私は彼女を見つめる。

 テーブルに左肘(ひじ)を立て、左の掌(てのひら)に顎(あご)を乗せながら、彼女は私を見つめていた。


「なんかあった？」

 話したくないなら良いけど。と彼女は言って。

 私は眉を八の字にしながら苦笑(くしょう)する。

「困(こま)ったものだね」

「……何が？」

(君を、独(ひと)り占(じ)めしたいなんて)

 そう思いながら、私は答える。


「――いや、何でもないさ。……それで、五条悟の事はどう思った？ 浅上さんに取って好(この)ましい人間だったかい？」

 ――んなわけないわ。と彼女は目を逸(そ)らして横の方に目を向けると呟(つぶや)く。

「――何故？」

 そう問えば、チラっと私の方に目を向けて横に視線を戻すと彼女は口を開く。

「呪術高専ってとこの関係者ってのが大幅(おおはば)なマイナスポイント。あとあの目が好きじゃない」

「そうか」

 どうやら彼女の中で悟の好感度(こうかんど)は低いらしい。その事に私は浅ましくも安堵(あんど)する。

 けど、悟がたまに私の目の届かないところで会いに来るなんて、表し難(がた)い程(ほど)嫌(イヤ)な感じだった。



 

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