〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

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「すぐ持ってくるよ。少し待ってて」

「ティッシュも欲(ほ)しい…」

「ああ、持ってくるね」

 顔を上げて鼻(はな)を啜(すす)る。

 男の中でも体格(たいかく)の良い大きな黒い背中(せなか)を、オレは目に映してた。

(ありがとう……夏油)

 オレは心の内(うち)で静かに思う。

 





「夏油様っご飯できました」

 窓(まど)の側(そば)に寄(よ)りかかって目を閉(と)じているオレは、その声に多分茶髪(ちゃぱつ)の子供だろうと考える。

 ２つの小さな気配(けはい)に、黒髪の子供もいるのだろうと考えた。


「そうか、ありがとう。――浅上さん、夕ご飯を用意するから少し待ってて」

 そうオレに声を掛(か)けると、ソイツと子供の気配は去(さ)って行く。

 目を開けた。オレは立ち上がる。

 オレは端(はし)の方に置いてあった和テーブルを１人で持ち上げて、部屋の真ん中の方に持って来る。

 そして、窓の側に寄りかかって座って。目を閉じた。


 しばらくすると、アイツだろう気配(けはい)と大人(おとな)の気配が１つ部屋にやって来る。

 和テーブルだろう、その上に器(うつわ)を置く音が聞こえる。微(かす)かに鼻に香(かお)って来る、温かいお蕎麦(そば)やうどんなどの汁(つゆ)の匂(にお)い。

 ゆっくりと、静かに瞼(まぶた)を上げる。


「口に合うかは分からないけど、温かいうどんにしてくれるように頼(たの)んだんだ」

 麺類(めんるい)も好きって言っていたから、蕎麦(そば)でもいいかなと思いはしたんだが、やっぱり浅上さんはうどんかなと思ってね。とソイツは続ける。



 

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