〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

５話 難関だとしても ページ23

 


 パジャマ代わりの黒いジャージの半パンを見つけ、半袖(はんそで)の白いＴシャツを選んで会計を終えて、オレとソイツでそれぞれ一袋(ひとふくろ)ずつ手に持って。そのまま店を出た。


「私としてはもっと可愛(かわい)い服を着て欲しかったけれど、これはこれでまあいいかな」

「オレを着飾(きかざ)ってどうすんの。何の得(とく)にもなんないでしょ」

「浅上さんは自覚(じかく)してないかもだけど、身長は女性の中じゃ高いし浅上さん自身の素材(そざい)も良いから服を選ぶのは楽しいよ？」

「素材が良いとか楽しいとかはともかく、オレの容姿(ようし)がそれなりなのは知ってる」

 オレから見ても母さんは綺麗(キレイ)だ。お世辞(せじ)じゃなく。

 そんな母さんに顔が似(に)てるって言われるオレも、自分で言いたくは無いけど、それなりって事になる。

 オレの目付(めつ)きはキツいし、髪(かみ)の色は黒髪の母さんとは違って父さんと同じだけど。


「やはりそうか」

「――は？」

 ソイツの言葉の真意が分からず、低(ひく)めの声が出る。そのままエスカレーターに乗る。ソイツはオレの一段(いちだん)後ろに乗った。


「聡明(そうめい)な浅上さんが自分の見た目を計(はか)りかねるとは思えないだろう？」

「聡明じゃないけど。てかアンタ、今オレは自覚してないかもだけどって言ったよな」

「確(たし)かに言ったよ。半信半疑(はんしんはんぎ)だったからね」

 オレはそれに何も言わずに、エスカレーターが下に来たらエスカレーターから降りる。

(そうだわ)

 オレは思い出して歩きながら口を開(ひら)く。


「スマホ返して。神代(かみしろ)先生心配してるだろうし」

「車に行ったら渡(わた)すよ」

「絶対だからな」

「きちんと返すよ」

 その言葉をとりあえず信じる事にして、オレとソイツはデパートの外に出ようと歩き続けた。


 

 

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