〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

１話 対面 ページ2

 


 掴(つか)まれた右手。

 青々として恐(おそ)ろしく綺麗(きれい)な碧眼(へきがん)がオレを見下ろす。

 この眼(め)は、――好きじゃない。

 確かに綺麗だ。美しい色をしてる。――けど、その反面恐ろしさも覚える。捉(とら)えた獲物(えもの)は逃(に)がさない。そんな圧(あつ)の籠(こも)った色をしている。


「もう逃がさないよ。浅上Aちゃん？」

「……」

 オレはその顔を睨(にら)み続ける。

「そんな警戒(けいかい)しないで。僕は別に君に害をなそうと思ってるわけじゃないよ」

 ……害をなそうと思ってるわけじゃない？ オレはその言葉に怪訝(けげん)に思いながらその気味の悪い目から視線(しせん)を逸(そ)らす。


「本田。戻っていいよ」

「は、はい！」

 後ろにいるスーツを着た男の人はそう返事をするとオレと白髪青眼(はくはつあおめ)の横を通り、視界(しかい)の端(はし)に映る車に乗り込(こ)む。


「それじゃあ、話をしようか」

 そう言って、視界の端のソイツはオレの手を掴んでいない左手を動かす。オレはチラっと見てすぐ視線を逸らす。

 ソイツはサングラスをかけていた。

「……お帰り下さい」

 サングラス越しに見えるソイツの目が見開かれる。するとクックッと笑い声をあげて。

「一言目がそれ？」

 Aちゃんは知らないだろうけど、君を捜(さが)すの結構(けっこう)苦労(くろう)したんだよ。ま、嘘(ウソ)だって分かってたけど、当然の如(ごと)く偽名(ぎめい)を口にするし、歳(とし)だって２０じゃなかったしね。

 そう、訊(き)いてもいないのに喋(しゃべ)るソイツ。


「それで、君の中にいるそれは何？」

 呪霊飼ってるの？ それとも取り憑(つ)かれてる？ どっち？ とソイツは訊(たず)ねてくる。その間もオレは一切視線を合わせる事無く黙(だま)り続ける。



 

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