〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

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「何かあれば連絡(れんらく)するよ。だから帰ったら、オレのこと出迎(でむか)えて？」

『そんなの当たり前じゃん！！ でも！ 本当に１週間いるつもりなの！？』

「大丈夫だよ、父さん。心配かけてごめん。でも本当に大丈夫だから。オレを信じて」

『……菖蒲』

 父さんが母さんに何かを言われたのか、母さんの名前を呟(つぶや)く。

 少しの沈黙(ちんもく)。


『……無事に帰って来るって、約束だよ』

「ありがとう、父さん」

 父さんの言葉に、オレは少しだけ口元(くちもと)が緩(ゆる)んだ。

『何かあったら頼(たよ)ること！ 絶対だからね！！』

「…うん。解(わか)ってる」

『……じゃあ、またね。無事でよかったよ、A。おやすみ。良い夢見てね』

「…うん。おやすみ、父さん」

 そして通話を切る。

 窓(まど)の側(そば)にいたオレは、縦長(たてなが)の開いてる窓から星空を見上げる。

(やっぱり、ダメだな)

 オレは家族の声を聞くと、やっぱり、どうしても今日の出来事(できごと)に繋(つな)げてしまう。


「お父さんだったんだね。悪い事をしたね。突然(とつぜん)連れてきてしまって。――心配してただろう？」

 和テーブルの窓側(がわ)の方(ほう)に座っているソイツが、オレに言う。オレは答えずに沈黙(ちんもく)してる。

「……浅上さん？ どうかしたかい？」

「……――悪い。また抱(だ)い…抱き締(し)めてくれる？」

 そう、ソイツを立ったまま振(ふ)り返って訊(たず)ねてみれば、ソイツは微笑(ほほえ)んで、――いいよ。と口にする。

 ソイツは腰(こし)を上げるとオレに近づいて来る。そして、オレをその手で優しく包(つつ)み込(こ)んだ。




 

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