〈２〉愛を運ぼう【夏油傑】

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「オレは――ここから離れられない。大学が通い終わるまでは少なからず離れる気は無い」

 オレは真剣(しんけん)な眼差しでソイツを見つめて続ける。

「正直(しょうじき)心底物好きだな、とは思うし、その気持ちは素直(すなお)に言えば嬉しい」

 けどな――とオレは口にして、テレビの横の本棚(ほんだな)に近づき、その上に伏(ふ)せて置いておいた写真立てを手に取って見る。

 母さんと父さん、オレの家族で撮(と)った写真。オレはそれを見て口を開く。


 "夏油"――、愛っていうのは重いんだ。と、初めてソイツの名を口にして、オレは語り始める。


「愛っていうのは人を依存(いぞん)させる」

 その愛が途切(とぎ)れた時、オレは生きていけなくなるに違いない。と口にして。

 その写真立てを再(ふたた)び伏せて、ソイツを振(ふ)り返って。


「だから、オレは沈(しず)みたくないんだ。依存したくない」

 それが、もし愛だと云(い)うなら――

 オレから、離れて――――

 オレは声を零(こぼ)す。







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「父さんと母さん、家族の愛は不滅(ふめつ)だ。永遠(えいえん)なんだよ。そう信じてる。だから依存しても、沈んでも問題ない」

 けど、他人(たにん)は違うだろう？ と浅上さんは話す。

「だからオレは、人となるべく関わらずに、距離を保(たも)って生きてきた」

 その言葉に、理解した。私の呪霊越しに聴(き)いた彼女の大学での生活。必要(ひつよう)最低限の人と、必要最低限の会話しかしないで過ごす彼女の様子。

 それは、人との距離を自ら保っていたが故(ゆえ)だったのだと。


「知ってるだろ？ オレは強くあらなきゃいけないと思ってる。――けど、実際(じっさい)は弱いんだ」

 オレは、オレ自身を支(ささ)える愛が無くちゃ生きていけない。今オレがここに居るのは、ここまで生きてこられたのは――全部、愛を注(そそ)いでくれた家族のお陰(かげ)だ。そう、浅上さんは私に話す。



 

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