〈２〉愛を運ぼう【夏油傑】

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「……浅上さんは聡明(そうめい)だね」

「それによってアンタの決断がどれだけのモノか重みを感じた。大義(たいぎ)には犠牲(ぎせい)が付(つ)き物だからな。――オレはそんなアンタを許しはしないけど」

 それでも、アンタはオレの味方だって言えるのか？ とオレは目を見据(みす)えて訊(たず)ねる。


「前にも答えただろう？ 浅上さんが例え私を傷付けても、私を許さなくても、私は浅上さんの味方だよ」

「裏切るなよ」

「もちろん。――もう一度、信じてくれるかい？」

 オレはゆっくり頷(うなづ)く。

「ありがとう、浅上さん。絶対に約束は守るよ」

 そう言って、ソイツはホッとしたように微笑(ほほえ)む。

 オレはその顔を見つめる。

 やっぱり、恐ろしさはある。万一でも失いたくない。

 けど、きっとコイツは約束を守るだろう。そう、少しずつ信じることにする。


「なあ」

「何かな」

「抱(だ)いてくんない？」

 ソイツはオレの言葉に目を見開いてフリーズする。


「ああ、言い方が悪かったな。抱き締(し)めてくんない？」

「あ、ああ。ビックリしたよ。――だけど、突然(とつぜん)抱き締めてほしいってどうしたんだい？」

「温もりが欲しい。独りを感じて心細い」

 それを聞くと、ふふ、とソイツは笑う。

「何だよ」

「いや、浅上さんでも人肌(ひとはだ)が恋しくなるんだなと思っただけさ」

「煩(うるさ)いわ」

「でも、私なんかでいいのかい？ 一応聞くけど、私は男だよ？」

「人肌に男も女も無いわ」

 浅上さんらしいね。と言うとソイツは優しい顔で両手を広げる。


 オレはそれを見るとゆっくりその中に入り、その体格(たいかく)の良い身体(からだ)に抱き付く。ソイツは優しく慈(いつく)しむように包(つつ)み返してくる。

 この匂(にお)いは別に嫌いじゃない。一度目の時は拒絶反応(きょぜつはんのう)が出たけど。

(――本当に、浅上さん。君を失いたくないな)

 オレの存在を身に染(し)みて感じた事によって、その想いが強くなっていたなんてオレは気付かない。



 

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