〈２〉愛を運ぼう【夏油傑】

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 次に見た夢は、あの青眼(あおめ)の男がオレのトコを訪れる夢。

 オレの周りを彷徨(うろつ)いてるのは最悪の呪詛師で、危険だということを説明される夢だった。


 次に見た夢は、アイツに裏切られる夢。母さんと父さんを殺(ころ)される夢だった。

 その惨状(さんじょう)の中。立ち尽くす自分。

 惨(むご)たらしい有り様を、目にする自分。そんな、最悪な夢だった。


「っ――、はあ、はあ、はあっ――っ！」

 荒(あら)い息をする。恐怖(きょうふ)で身体(からだ)が支配される。

 恐ろしい夢だ。ただの夢だけど、そのイメージがこびり付く。

 時間を何とか確認する。８時１０分。

 ８月２０日、アイツの来る水曜日。最悪な朝だった。






 ２度寝なんて出来ず、９時前を迎える。ピンポーンと音がして、来て欲しくない時が訪れる。

『おはよう、浅上さん。今日はいい天気だよ』

 そう言うソイツに答えること無く玄関に向かって鍵(かぎ)を開ける。そのままソイツが入ってくる前にさっさと自分の部屋に戻る。

 流石(さすが)にプライベートルームと言って以降、オレの部屋に入ってくる事は無いから。


「浅上さん、また２度寝かい？」

 ２度寝なんて出来る気分じゃない。けど勘(かん)づかれるのは面倒(めんどう)だ。

 オレは口を開いた。

「１１時まで寝るから。いつも通り勝手にやってて」

 そう言えば、ソイツは何も言わずに襖(ふすま)から離れる。気配が動いていく。

 アイツに裏切られて地獄を目の前にしたのに、どうやって１日過ごせっての。

 それがあくまで夢だと解(わか)っていても、イメージは消えてくれなかった。

 心の中でオレは顔を顰(しか)めた。






(九尾――)

『何だ？』

(母さんに取り憑()くって手はないの)

『菖蒲の幸せはおまえが生き続けて人生を終える事だ。菖蒲に取り憑かずにおまえに取り憑いているのはそのためだ。それがワシのためだからな』

 結局、九尾がオレに取り憑いているのは母さんを幸せにするっていう自分の目的を叶(かな)えるため。自分のためだ。



 

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