〈２〉愛を運ぼう【夏油傑】

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 ８月３日、日曜日。朝早く起きた私は、外の空気を吸(す)っていた。青空で良い天気。 

 浅上さん。彼女に週に１度会いに行き始めてから、私は彼女の事をよく考えるようになっていた。


 始めは、その力が欲しかった。術師だけの世界を作るのに使える力だと。

 けど、接してみて分かった。

 彼女は、昔の私達のように猿共(さるども)を守る人だと知った。そして、強くあろうと本音を隠す人。その上、何より、誰かを傷つけない人だった。


 強引に押しかけた私を結局(けっきょく)は家に入れてくれて。そして夕飯もご馳走(ちそう)してくれた。

 それから、その後も嫌々(イヤイヤ)ながらも私に付き合ってくれている。

 極め付き、彼女は私の話を私の正義だと言ってくれた。頭ごなしに否定(ひてい)せず、見定めると言った。

 思慮深(しりょぶか)い人だと思った。

 私は彼女と過ごす事が楽しかった。心が安らいだ。その時間が好きになった。

 ２週間会えないという現実に寂(さび)しさを覚えた。


 今頃(いまごろ)、彼女はどうしているのだろう。

 家族と楽しく過ごしているのだろうか、と思いながら、彼女を私の家族として迎(むか)え入れたい気持ちが高まる。

 だが、私は私自身の家族である親をこの手で殺(ころ)している。その事を知った時、彼女はそれでも、私の正義だと言ってくれるだろうか。

 その事だけが、気がかりだった。






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『菖蒲。ここにしておけ。小僧の気配が家の前にあるわ』

(――！)

「マサ。車止めろ」

 九尾の言葉が聞こえない父さんはえ？ なんで？ と母さんの言葉に言う。

「早く」

 そう言われた父さんは、分かった。と言って車を止める。


「夏油くんとやらにあたしとしては会ってもいいんだけどな」

 と、母さんはオレを振り返って言う。

「母さんたちの事を知られたくない」

「言うと思ったよ」

 母さんがそう反応する。

 万一(まんいち)、母さんたちを危険に晒(さら)す事にならないように、迷惑(めいわく)がかからないように、情報を出来る限り渡さない。それが大切だ。



 

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