愛を運ぼう【夏油傑】

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 オレは一度目を閉じて、開くとソイツに視線(しせん)を合わせる。

 細い目がオレを見ているのを認識(にんしき)しながら口を開いた。

 にしても、コイツ、体格(たいかく)デカい。坊さんとはとても思えないくらいに。


「話は聞く。ソイツら引っ込(こ)めてくんない？ アンタのなんだろ」

 すると、ソイツは笑みを深くして。

 次の瞬間、悪霊どもは消えていく。

「さあ、行こうか」

「どこに。――言っとくけど、視える視えないとかそんな話、人のいるトコでしないから」

 オレがそう言えば、ソイツはふむ、と口にして顎(あご)に右の拳(こぶし)をやる。


「どこがいい？ 君に合わせてあげるよ、"浅上(あさがみ)さん"」

(っ――！)

「何で、オレの名を――っ」

 人が今は通ってない。その上、一人称で変なヤツと思われて離れてくれるなら願ったり叶(かな)ったりだった。だからオレは『私』でも『あたし』でもなく、『オレ』と言った。


「その話も後でしてあげるよ。場所をまず決めなさい」

 そう言われて、オレは考える。

 人気の無い場所。思い当たるのはオレがいつも破魔の箭(や)を放つ緑に囲まれた高台の神社。

 視線をソイツに向けて問う。


「アンタ、オレがいつも悪霊――アンタが言ってる呪霊ってヤツを祓ってる場所は知ってんの？」

「ああ、高台にある神社の事かな。それが？」

 モロバレかよ。不愉快(ふゆかい)。


「そこなら人も殆(ほとん)ど来ない。話すなら打ってつけだ」

「私は構(かま)わないよ」

 その答えを聞いて、オレは来た道を戻り始める。１５分くらいかかるけど。

 ソイツは、オレの後をついてくる。

 念の為、後ろから襲(おそ)われたりしないか警戒しながらオレは歩いた。

 浅上さん、とそんな気も知らないだろうソイツはオレに話しかけてくる。

「私も今年１９なんだ。私としては仲良くして欲しいのだけどね」

 頭がイカれてやがる、とオレはその言葉に思った。何故そう思ったのかはオレの放った次の言葉の通り。

「人の年齢(ねんれい)調べ済みの不審者(ふしんしゃ)と仲良くできるとでも」


 

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