°４０ ページ42
失礼しました、と一礼して部屋を出る。
当てもなく廊下を歩いていると、自動販売機の前にキルアを見つけた。
｢ああ、A。｣
｢そういえば、キルアもさっき呼ばれてたよね。｣
まぁなと言うとキルアは缶ジュースの蓋を開ける。
私が初めて見るジュースに興味津々なのを見ると、彼は無言でもう1つ同じ物を買い、私に投げた。
｢私、お金持ってないからキルアにあげるよ。｣
｢察しわりーな、オレの奢りってことだよ!｣
｢え、ありがとう…?｣
意外と優しいとこあるじゃん、なんて考えながら蓋を開け、1口飲んでみる。
すると、口に電撃にも似たシュワシュワした感じが広がって。
｢うわっ、これ何!?｣
｢何って、只の炭酸ジュースだけど…もしかして飲んだことねーの?｣
｢うん、まぁ…。｣
私が正直に頷くと、彼は私を指差して笑った。
｢変なの!今時ジュースも飲んだことねぇとか化石じゃん!!｣
｢ちょっと、そんなに笑わなくても良いでしょ!｣
あんまり酷く笑われたので、ムッとして頬を膨らませる。
だけど彼はそんなのお構い無しに、"流石にゴンでも知ってるぜ?"とまだ愉快そう。
｢あっ、そういえばキルアと2人きりで話すのって初めてだね。｣
｢そういやそーだな。｣
ゴン、という単語に釣られて思い出す。
適当に同意すると、キルアはまたジュースを1口。
｢…実はさ、俺んち暗殺一家なんだよ。フツーそんなの聞いたらビビるじゃん?
でもさ、ゴンに話した時、あいつは普通に返してくれてよ。
…それがちょっと嬉しくってさ。｣
大人びた表情で彼は言う。
ああ、最初に会った時感じた殺気も、きっとその暗殺教育の成果だったんだ。
｢…普通だよ。だってキルアはキルアだもん。
ほら、最近よく笑うようになったじゃん!｣
冷めた彼の表情に、何だか昔の自分を重ねてしまってそう答えた。
キルアはそんな私に、目を丸くして…やっぱり私を指差す。
｢ははっ、やっぱお前おもしれー!!｣
｢えっ、今良い事言ったでしょ!?｣
そう言うと、彼はふん、と微笑んで。
｢でもよ、やっぱ俺最近すげー楽しいよ。お前達に会えて良かったぜ。
…恥ずかし!何言ってるんだろうな俺、ちょっとお菓子でも食って落ち着いてくるわ。｣
｢分かったよ、ジュースありがとう。｣
｢おー、利子は高くつくぜ!｣
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作者名：なぎテラス | 作成日時：2021年1月28日 19時
