流転と夢幻

38　過去編 ページ43

「じゃあ、俺はこれで失礼します」


尚隆、玉葉、Aは、玄関で夜蛾を見送った


「じゃあな」
「ありがとうね」
「バイバイ、えーっと正道、お兄さん？」
「ブフッ」


Aの言葉に尚隆が吹き出した
それはあまりにも似合わない
玉葉も先ほどおじさんという言葉を咎めたが
どうにもこの顔にお兄さんはしっくりこないと思った

当の呼ばれた本人も苦笑している


「いや、おじさんで大丈夫だ……」
「バイバイ、正道おじさん！」


手を振って見送るAに手を振り返し、丁寧に礼をして夜蛾は去っていった


「万一の事がなければいいんだけど…」
「そうだな」


2人の声が嫌に重かったので、Aは不安げに尚隆を見上げる
それに気づいた尚隆はすぐに笑顔を見せ、わしゃわしゃとAの頭を撫でた


「……いいか、A
強くなれ
己が正しいと思う道を歩けるよう 」
「？どういうこと？」
「うーん、説明が難しいな。まず、強さには色々あってだな」
「大丈夫よ、Aならいつか分かるわ。賢くて、とっても優しいから」
「ククッ、どっちが親バカなんだか」
「私は他の人の前では言いませーん」


尚隆と玉葉は2人で笑い合っていたが、Aは仲間外れにされているような気がして尚隆の服の裾を引っ張った


「ねぇねぇ、父さん、稽古‼」
「あぁ、そうだったな。よし、やるか！」
「頑張ってね、2人とも」
「「はーい」」









　





　


山を少し登ったところにある小さな一軒家
そこには幸せに暮らしている家族が
確かにあった____


　







　

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