４５話/濁らないもの ページ47
復讐の対象には、確かにお前もいた。その発言に驚いたわけもなく、私は彼女より浴びせられる罵倒を受け止めた。信者を安楽死させ、天へ導くつもりが、材料が一つ違うだけで国が一つ滅ぶ。そんなクソみたいな事件は聞いたことがない？ああ、私もだ。
懸命に母の介護を続けていた彼女から、親を引き剥がした。理解される第一歩だった時、すべてが壊された。自分の夢を叶える場所の惨状を見れば、小さい子なら確かに生きる気力も失う。私も彼女が死ぬ瞬間を見たときは、海に沈もうと思ったものだ。それを引き留めたのは、自ら死を選んだレイナ。今度こそ死なせまいと奔走したものだ。
彼女の罵声が掠れた頃、もう喉は酷使したくないと言って、Aは瓦礫の山を探し続けている。何を探しているのかと聞いても、彼女はこちらに目も耳もくれず。ようやく物を見つけたのか、少女らしく嬉しそうな声を......あげもしなかった。
「これをカンヌに使えば......あの不死も、少しは弱点を見せるだろうさ。使っても問題なし。その後は誰かの資金源に変えれる。これ、使うか。サボ。」
「ありがたく使わせてもらうよ。合図さえあればカンヌに仕掛ける。命まで消費する気はないからな。」
どこからともなく現れた革命軍の男と淡々と話を進めている。だがどこか険悪な様子で、私のような人間は会話に入ることすら許されないのだろうという雰囲気だった。
......それでもいい。あの日無力にも守れなかった自分へ、彼女は今生きている。いつかは黄泉に帰らねばならない存在だが、今だけはこの奇跡を喜ぼう。あの日の私の業を、唯一否定してくれる存在が、ここにいる。これが私の救いであり、私に道を示してくれる唯一の案内人。故に、選ばねばなるまい。私はいつまでも、この子に縛られてはならない。
「Aっ」
「ラン。私とお前は生前から面識もなかったし、こうして会話するのも初めてだ。だが、レイナへの愛だけは深く伝わったよ。私の代わりじゃなく、本当の娘として愛しているんだろ。ならさっさと行け。私は、一人で消えたい。」
「......ごめん。でもありがとうございます、A。あなたがこの世に産まれ落ちたことを、私が祝福します。私は、あなたを愛していた。」
何重にも結ばれていた呪いの一つが、消えたような気がした。
「......愛していた、か。最後まで愛してくれる者なんて、やはり一人もいないものだな。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
