４４話 ページ46
多少の浮気なら許してあげる。レイナがそう言ったとき、スレットが気付いてたのかと驚く素振りを見せた。
あんなに未練たらたらな姿を見せられては、嫌でも気付くと、悲しそうに言うレイナ。好かれていたのは自分ではなく、その中にいたAだったと思うと、今にも全員を殺したくなると。俯くスレットにレイナはそれでも、スレットの未練がどうにかなってくれるなら、あなたの人生初めての恋を見守らせてと言うのだ。
それに対するAの反応といえば、至極当然なもの。勝手に子供を妊娠させておいて、一度はプロポーズもしたくせに、昔の女のケツ追いかけ回してばかりだなと罵倒の嵐。今すぐ死にたいと言うスレットの喉元は、残念ながら完治している。
もちろんレイナもお怒りモードだ。いつまでも追いかけ回していたら、子供と心中するついでに道連れにするからねと言うと、二重......いや、三重の意味で彼の体が震え上がる。この本気の脅しはスレットにも効いたことだろう。その場にいたコビー、ランにも響いたらしく、せめて同盟の条件だった皆の平穏な暮らしだけは守らなければと、改めて決意する。
輸血による治療を終えた頃、レイナは先にカンヌを捜して殺すと言って、その場から立ち去ってしまった。その背中を目で追っていたAは、先程よりも不満そうな顔をしている。
「あ、あの......」
「教祖は黙れ。娘も追いかけず、こんなところで突っ立ってる野郎とは話したくないんだ。私は王宮跡を調べる。」
「......ちゃんと追いますけれども。今度はあなたのことも守らせてください。軽い頼みだったとはいえ、あなたを守るよう仰せつかっています。今晩こそは、守りたい。」
ランの言葉にまた呆れたのか、Aはため息をつきながら王宮跡へと向かう。それをランが追い、残った二人がレイナを追うようにして戦力が分散される。
......頭上にて輝く月の色が、黒く染まっていたことを知らずに。
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
