３話 ページ5
「......何やってんだ、僕は。本当にどうかしてる。ましてや、海賊と手を組もうなんて。これじゃあカンヌ中将のいいように動いてしまうだけだ。」
大きくため息をつく。そろそろ元帥の元へ向かわなければならないというのに、コビーの体は軽くなるどころか重さを増していく一方だ。
思い出すのは、常に孫の自慢ばかりを話していたカンヌの姿。有事の際はあの子に頼るといい、なんて話をするカンヌ。あの子はきっと皆に頼られるすごい英雄になれるんだって、指名手配を掲げては高らかに笑っていた。だからこそ信じたくて、なのに非情にも現実は波のように押し寄せてくる。
カンヌはもう自分を信じるなと言いたいのか、正義とはかけ離れたことをしている。どうしてそんな人を、今も信じようとしているのか。本当は居場所だって分かるのに、誰も命令を下せないのは最後の一歩を出せないから。下がこの調子じゃ、命令を下したところで意味はないと上も思ってるのだろう。
どうすればいいのか。そう悩む彼の扉を、誰かが開く。
「......ヒナさん？」
「まだ元帥のところに行ってなかったみたいね。あのワーム状の物体だけれど、相変わらず事件が起きた場所に存在しているわ。破壊も無理ってことを報告しに来たの。強い攻撃を連続して当てれば変化は見られそうだけど。元帥とはヒナが話すから、コビー大佐はしっかり休むこと。共闘、私は賛成するわ。」
「......」
「ガープ中将と海賊王がそうした前例があるわ。何も正義の心を持つのは海兵だけじゃない。産まれて間もない赤ちゃん、子供、大人......海賊にだってある。それを言ったのは、私たちが尊敬するカンヌ中将よ。あなたが信じるべきは、犯罪者カンヌではなく、」
海軍本部所属、カンヌ中将。何度もその姿を思い返す。彼女は孫を自慢していながらも、海賊の味方でいるということはなかった。島に害を成した者どもを成敗し、与えられた仕事は全て完璧にこなす超人。
でも、たまに海賊と共闘することだってある。見逃してしまうことも。待機命令で何もできなかったとはいえ、さすがにまずいのではと聞いたこともあった。
「ケースバイケースだ。これ、上には内緒な？にししっ」
「僕にもいつか、そういう日が来るんでしょうか......ちょっと怖いかも。中将と同じことしそうな気がする、本当に。」
「するだろ。だってお前は、見かけだけの正義より本物の正義を信ずる男なんだから。」
＿＿＿＿＿＿その人はいつだって、僕を正しく導いてくれた。
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
