３５話 ページ37
夜になり、彼女はとうとう戻らない。これ以上の待機に意味はないと感じた自分を含め、多くがレイナさんの捜索を開始した。
......海兵にとって一番の理由は、彼らに殺されるのが怖かった、なのだろう。噂を聞くに、レイナさんとスレットさんの二人だけでも麦わらの一味と戦える実力を持っていると聞く。そのうちの一人だけでも、殺意が満ちてしまえば自分達など虫けらのように。彼らが罪を増やせば、レイナさんの望みは叶わなくなる。僕にとっての一番の理由は、彼女の叶えられるべき望みが叶うこと。
この戦いで誰かが死ねば、それはもう叶わない。誰よりも彼女が理解している。その彼女が戻らないというのは、不可解な状況だ。彼女が自ら提示した平和な望みを、自ら捨てる真似をするわけがないと。僕みたいな馬鹿でも考えれば分かる。
しかし、仮に捨てる覚悟で挑まなければならない何かがあるとすれば？......あの幼い体で、どこまでやるつもりなのか。すべてが予想外すぎた。
「そうか。お前、幼体となっても強いのか。さすがはレイナだ。ただ守られるだけの存在ではなくなったと。」
「そうなんだよ。私、今度は自分の家族と友人を守れるようになったんだ。あなたのように自分を撃った人を、わざわざ咎めずとも戦える。私は回りくどいことをするぐらいなら、直接原因を叩く人だから。だからね、A。あなたの敗因は、私が勝利のためなら頭脳で動くと思ったことなんだ。私は勝利のためなら、悪魔に魂を売るの。」
冷たい声と、墓地で聞いたばかりの声。その声は熟練者だけに届いたものか、単純に運がよかっただけか、すぐに駆けつけたのは僕を含めた戦闘に特化した強い者だけ。無論、そこにはスレットさんとランさんも。
見つけた彼女の様子は特に変わりなかったが、自分の肉体を奪ったAに対して歩み寄ると同時に、横たわっていたAは防御の構えをとる。これから何か始まるのかと思うと、レイナさんの髪の毛が刃となって、Aの背後にあった木を切り倒した。
「範囲は無限、髪の毛は目にもなる。どこに逃げようが、私が地獄まで追い詰めてあなたを捕まえる。肉体を取り戻して殺し、首も持ち帰る。それが手っ取り早いでしょ。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
