３３話 ページ35
「やあ。私のことは見えるのか？それとも精神の脆さが勝ってしまったのか？声が聞こえるのなら、どちらでもいいがね。今のお前は一つの手柄で複数の事柄を一つにまとめようとすると思い、カンヌの真似をしてここに呼んだのさ。」
「......声が少し、レイナさんに似ている。誰なんですか？」
「やっぱり分かってないか。私が本物のAだ。そこらの叶わない夢ばかり見るクソ女どもとは違って、もっと現実的な夢を見る努力家だ。しっかり覚えといてくれよ......？」
視界に多少ノイズが入るも、その声だけはハッキリと聞こえる。彼女よりも毒の多い女性だ。誰だってこの人と話したくないと、そう思うだろう。
彼女もまた、自分達が捜している者の一人。捕まえなければならない人。レイナさんの肉体を奪い、スレットさんたちへの復讐を果たそうとする殺戮者。だが彼女からは殺意が感じられず、ひとまず話を聞こうと、僕はその拳を落ち着かせた。
「海兵にしては話が分かる男だな。主役に大抜擢された青年、その精神はあまりにも脆かった......可哀想なことだ。」
どこかこちらを煽る口調ながらも、その目で自分のすべてを見抜くような人。レイナさんとは違うAの姿に、心が少しずつ落ち着いていくのを感じる。あの人とは本当に違うんだ。
だってこの人は、本気で人を心配しない。
「さて、コビー。お前が信じるかどうかは別問題として、一粒の薬をくれてやる。これを飲めば、お前の景色はまたいつも通り。飲まなかった者の末路は......一応言うか？全ての景色は異空間そのものと成り果て、お前が愛した世界は血の色に染まるってやつだ。そんな世界で生きていける自信は」
「ないです、でも」
「何故そんなことをって聞きたいんだろ？見てて無様すぎる。これから私が殺す相手は、力を全て出し切ってでも敵を屠ろうとする者でなければな。お前たちの同盟修復にも手を貸してやろう。その代わり、この会話については、一切誰にも言うなよ。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
