２９話 ページ31
その危うさも上書きするように、レイナは危険なものと安全なもので分ける能力を取り戻したのか、自ら戦いに赴こうという考えをしなくなった。Aは戦闘狂ではあるけれど、レイナは怪我をするのも怖いから戦いたくない、とのこと。それはごもっとも。こんな小さな体の子に戦わせるとは、常識的に考えておかしいだろうと、改めて皆が思い知ったようだ。
しばらくして落ち着いたのか、レイナはベッドに座り直す。もう少しでAの捜索を開始するという話を聞いて、より真面目な表情をしていた。
「......素直に体を返してもらえるのかな。一度諦めたくせに、って言われそう。」
「でも今は諦めていない。そうでしょう？」
「コビー......女を惚れさせる上に、慰めることも上手だなんて......あっでも顔が幼すぎるからアウトかな。」
「僕もあなたのような失礼レベルを上げていく女性は遠慮します。というかあなただけ。友人になってもろくなことがない気がする。」
互いに軽口を叩くほどの余裕こそはあるものの、やはり焦りは募っているのだろうか。一歩間違えれば、自分が消える結末だってあるのだから、仕方ないだろうとコビーは思うが、それとは別の焦りも感じたらしく。
あえてそれを口にすることはなかった。それは彼女の問題なのだから、友人紛いの関係である自分が口出しすることではないと思ったから。それ以前に、子供の成長とは時には見守ることも大事なのだろう。間違いに近付きそうになった時は止め、これは大丈夫だろうという時は共に進んでみる。そうして成長し、問題を解決するのが、子供というものなのだから。
ああ、しかし。これもまた問題が一つあるな、とコビーは悩む。我儘、または肯定感が薄い子に限り、大人が手伝ったことを気付かれないようにする必要があるためだ。それも今のレイナには必要なのかと、普通の親のように悩んでいる時だ。
少し生意気で、でも可愛げもある純真な子がいなくなっていた。
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
