２８話/鉄の弾丸 ページ30
「......気を失って倒れたから、何か敵の罠にやられてしまったんじゃないかと。無事でよかった。ヘルメッポさん、後は僕が看病します。ヴィアさんと息子さんを頼んでもいいですか？」
「おうよ！もう倒れんじゃねぇぞ、レイナ！」
どこか遠いような、すぐ近くにいたような。そんな感覚だった。レイナは妙な感覚から戻りきっていないのか、ベッドから起き上がろうとするもすぐに倒れてしまう。コビーがレイナを支えながら、なんとか立てるという状態だった。
しばらくすると立ち方を思い出したように、レイナも一人で歩けるようになり、久しく自分の感覚で体を動かしているからなのか、テンションも絶好調のようだ。その様子を見守るコビーも、外からこっそりと覗く海兵らも、実際のレイナとしての人格から考えられる年齢と見た目を合わせると、微笑ましい光景に見えるだとか。
それもそうだろう。元々の体の年齢は２６歳、精神年齢は十歳以下と考えれば、そもそも今日まで生きていたという方が不思議なものだ。いつ元に戻って正気を失ってもおかしくなかったはずなのに、彼女はいつも通りに振る舞っていた。
「あれ、味覚がちょっとずれてるんですかね。ヨーグルトの甘さが分からない。」
「レイナに戻る前は、甘くて好きだって言ってたのに......そのうち味覚も追い付きますよ。僕たちがあなたを守ります。今のあなたは、戦いも知らない小さな子供ですから。」
「むぅ。なんかムカつく。」
例の浮島で一度は死を選ぶほどの苦しさを味わったとはいえ、そんな簡単に立ち直れるものだろうか。まだ背負っているんじゃないんだろうか。そんな心配とは別に、レイナは元気そうにしている。
......それでも。肝心な時に何かあれば、この子は簡単に死んでしまうのではないか。そんな危うさも抱えているような気がした。
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
