２６話 ページ28
「私はお前だ。お前は現実の甘えの象徴に対し、こちらは逃げの象徴。どちらかの人格......もしくは二つの人格を消さなければ、お前はもう母としても生きていけまい。どうせなら今、決めないか？」
全てが終わっても、平穏で暮らせる夢が叶うだろうという一種の甘え。もうすべてを捨てて逃げたい自分もいる。そのことに気付いていたレイナは、それらも含めて紛らわすように薬を飲み干し続けた。それも限界が来たのだろう。
こんな夢を見てしまうぐらいだ。レイナの時間が残り少ないのは、目に見えている。故に彼女は、決断していながらも恐れていることを口にした。
「私は、あなたとお別れしたい。嫌いになったわけじゃ、ないんだよ。」
「知ってる。」
「私の痛みを引き受けてくれた。知らなくていい快楽さえも。仲間がいることの幸せを感じるために、私はあえて孤独感を味わったんだと思う。......あなたでいると、私は強く進めたよ。目上の人に進言することだってできた。でも、これからはレイナが強くならなきゃ意味がないんだ。」
「それがお前だからな。必死に私についていこうと、私を観察し、私の真似をする。その上でお前は決めた。Aになれなくとも、今度こそ自分の大切なものを守るために生きると。......よし！行ってこい！」
Aはレイナから聞きたい言葉を聞けた、そのお礼だと言って、レイナを強く突き放す。バランスを崩したレイナは文句を言おうとAに目を向けるが、もうそこに彼女の姿はない。共に暖まった場所も。
......徐々に声が強くなる。大切なそれの声だ。レイナはAがいた場所から目を離し、声がする方向へと、ひたすら歩みを進めた。
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
